A/H5N1

2008年12月24日 連載
 今週各病院に配られた小冊子、<インフルエンザ診療マニュアル>より。

○ 新型インフルエンザは、通常のインフルエンザAウイルスが変異した場合にそう呼ばれる。誤解しがちだが、鳥インフルエンザA/H5N1は変異型でないため<新型インフルエンザ>ではない。毒性が強いため話題となっているが、最も恐れられるのがこれがさらに変異してとうとう<新型>になった場合。

 以下、A/H5N1について。

○ A/H5N1の死亡率は63.3%と高率で若年者に多い(鳥の世話をする年齢と関連)。ほとんどが病鳥・死亡した鳥からの感染。そりゃ発症が出た養鶏場が閉鎖されるのもやむを得ない。

○ 通常のインフルエンザと違って血液中から検出されることがある(RNAが半数以上から検出)。よって血液から全身に運ばれ、多臓器不全となる理由がここにある。体の過剰な炎症反応(高サイトカイン血症)が結局全身を悪化させる。

○ ウイルスは1週間したら出ていくイメージもあるが、この場合それを超えて長期間とどまる(3週間以上!これでは体がもたない)。よって死亡率も高い。

○ 上気道感染(のど)<下気道感染(肺炎)、血液検査では多臓器不全を反映しほとんどすべての緊急項目が異常値に(肝・腎障害、DICなど)。

○ 病院に通常置いてある検査キットではA/H5N1は検出できない。研究用のキット(Flu A)の組み合わせがいる。現在最新のFlu H5キットを開発中。

○ 通常のインフルエンザウイルス同様、タミフルは早期の投与ほど有効。なおA/H5N1にはリレンザも有効で、タミフル耐性タイプでもリレンザが有効だったという報告もある。

○ 前述のように体内にとどまる期間が長いので、使用量は通常より多く長期間、さらには併用療法まですすめられる。

○ 予防はマスク(サージカルマスク・N95マスク)、予防内服、プレパンデミックワクチン(あらかじめ作成済みのもの)、パンデミックワクチン(実際の流行に合わて開発した出来たてワクチン。6か月~1年もかかるが)。

○ 開発中の新薬は内服でRNAポリメラーゼ阻害剤のT-705(富山化学)がⅡ相試験中。あと(以下2つはタミフルタイプのノイラミニダーゼ阻害薬)タミフルより10倍強力とされる吸入薬のCS-8958(第一三共)がⅢ相試験中、注射剤ペラミビルが間もなくⅢ相試験に入る。


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 今、(関西で)新型が発生した場合の隔離先施設が話題になっている。阪大近くの万博公園が有力のようだ。

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