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2009年6月9日 連載
夜の関西国際空港。悪天候。

 スマートな小型ジェットが着陸した。この悪天候にもかかわらず、機体は予定時刻のずれを1分も許さなかった。

 大雨の外界とは関係なく、黒ぶち眼鏡の中年男性は、黒いスーツで背を伸ばし、歩く。迎えに来た黒い外車に乗り込む前、彼の眼鏡に黒い夜景が反射した。すべてが、黒。黒、黒。

 彼の頭にあるのは、ただ・・・ボスから与えられたノルマとその期限のみ。彼のこれからの出世如何もそれにかかっている。彼は一応、日本人ではある。

「新理事長、そろそろ・・・」会長と呼ばれる人間が、乗るよう促す。
「書類を見せてください」

 渡された書類を1枚ずつ読む。車は知らない間に走り出していた。
「・・・・・・・・」

<第一目標 病院の買取り目標、その数・・・・・>
<第二目標 標的病院の、スタッフに関する詳細情報・・・>
<第三目標 今回のプロジェクトに関する、雇われ兵のプロフィール・・・>

「勝てるのは分かってます。その後の処理が私の関心事です」
「なるほど・・・すでに遠くを見ておられる。いやはや、頼もしい」

 どんどんめくる書類。必要なところだけ赤でチェック。要注意人物リストに移る。

「今からをもちまして、すべて私の指示に従っていただきます」
「ははっ!」

 大阪の病院のリスト、設計図、個人情報・・・。

「誰か1人でも私情に従って計画が崩れた場合はアメリカの上司に報告し、私は利益だけ受け取り撤退しますので」

「し、私情など。とんでもない!スタッフはみな従順なイエスマンばかりでして」

 彼はムッとなり、ペンにキャップし睨んだ。

「そこは日本人ですから。分かりません」

 外車は高速に入り加速し始めた。時計を確認、メモを確認と落ち着きがない。だが1つ1つの動作は目的があり効率的だった。

「市場を揺るがす問題は何であろうと、門番である私が排除します」
「まずは、どちらを・・・」
「天候の回復を待ち、出撃に備えましょう」
「用意するものは・・」
「力仕事向けの若者20名に医師1人、救急隊長1人。車はこの外車3台と救急車を1台」
「それだけで?」
「あと特殊技能傭兵を2名」
「1名は行かせますが。あと1名は交渉中でして」
「今回は1名でいいです。あとは、任せてください」

ブロロ・・・と車は闇に消えていった。




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