18

2009年6月10日 連載

 何も知らない、真田の医局。

「いや~。大学も相当困ってるらしいな!」
ユウはロッカーを開いたが、後ろのシローとトシ坊はテレビに向かったまま。

「残酷なようだけど、相手が大変だとこっちは身構えちゃうな!ノナキーの奴・・・」

トシ坊はこっちを向いた。
「いつもより5分、遅いですよ」
「途中、学生としゃべってた」
「業務に専念してください!」
「トシ坊。ノナキーの話出したとたん、いつも不機嫌になるのはよせ!」

ロッカーを開ける。
「いつまでももう、過去のことを根に持つのはよせ」
「・・・・」
「俺だってなあ。好きだった女が奴の。ノナキーの女房として取られてもよ。もう5年もたてば平気だよ?」
「・・・・」

トシ坊は返事しない。
ユウは不機嫌になった。

「なんか言えって!」

シローが互いを振り向く。
「まあまあ。ユウ先生も」

トシ坊はすねた表情だ。泣きかけなのが肩で分かる。
「大学病院に派遣できるほど、うちは余裕はありません!」
「それ、俺に言ってどうすんだ?」

近く、ピートが着替えしながら笑った。
「おいユウ。いつものやってやれ!」
ユウは面白がって、トシ坊の真似をした。

「オーベン!今日はよーく休んでください!」
とカンフーあいさつ。医局が(トシ坊以外)笑いに包まれた。

と、シローがテレビのボリュームを上げる。

「ユウキ先生。この事故、途中で見ませんでした?」
「あ?いや・・・」

 速報で、交通事故のニュース。多くのパトカーで国道が閉鎖されている。5~6台ほどの車がランダムに向きを変えたまま止まってる。

「玉突きか・・・当てた奴が行方不明だって?」
「ええ。運転手は逃走中ですって」
「よそ見してたのかな・・・」
「警察は、意図的な追突事故を疑ってるそうです」

 ユウは小さく嘆いた。
「どうしてこうも、運命でない人間が毎度のように選ばれるのか・・・」




コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索