真田病院、総回診。
ユウは6人ほどを先導。中盤を終えた。
「ザッキーは?シロー」
「新型内視鏡の説明があるって。メーカーが来てました」
「あの野郎・・・また逸脱しやがって!」
トシ坊が説明。
「66歳。心筋梗塞。他院で血栓溶解剤を投与され、当院へ」
「・・・・・・はいはい。次!」
70歳の、すぐにタンを吐くじいさんだ。
「いやぁ、変わりないんだなぁこれが」
「でもないな」担当医のユウはレントゲンをかざした。
「転倒したんだ。よりによって退院間近に」
そうこうするうち、認知症も進行してきた。
「いやぁ。今日帰りたいんだがなぁこれが」
「まだですって!」
40代の喘息。安静がちっとも守れない。
「先生ヒー!もう治ったヒー!」
「治ってないよまだ。それより、安静守ってよ!」
「ああやっぱダメでっかヒー!」
病院の前のスーパーは廃墟と化していた・・・が一部残っている。2階から下は残っている。その2階部分、いや1階部分はどこやらのモデルルームになると聞いたが。
「あそこも、俺たちが買い占めれば、ここから渡り廊下を国道の頭上に通して・・・!」
みな、廊下で夕陽を浴びた。
「そうして医者を増やしてだな・・・ナースはきれいどころ揃いでな。ほんで・・・」
もう何年も、夢みたいなことを言ってる。
「先生。そんなことせんでも!」事務長が現れた。両ポケットに手。
「品川!何しに来た!」
「来て悪いんですか!」
「ポイントだけ言えポイントだけ!」
みな、廊下に集まった。
シナジーは、田中君にしゃべらせた。
「僕が言うんっすか?では・・・まず1点。来月から給与が少し大幅ダウンします」
「少し大幅って何なんだおい!」
ユウは小さく叫んだ。シローの顔が曇った。
「オーナーからの意向です。ですが、近いうち着工の関連病院ができれば・・」
「いつの話だよ・・・」
「病院正面の建物。あれを買い取れば、そこに」
「つまり増床するようなものか?」
シナジーははさんだ。
「いやいや。真田病院は黒なんですよ、黒。ひたすら黒字続きなんです」
「もうかってんだな!じゃあなんで給料下げた!品川!黒いのはお前の腹!」
まあまあ、と品川はおさえた。
「もう少しの辛抱ですよ!今が試練の時です!」
「くだらん投資でもしやがったか!」
「だってオーナーが・・・」
「逃げるな!」
一瞬、品川は眉をひそめた。
「で、2点目なんですが・・・・・そのことにも関連して、奈良の僻地病院と連携をとりたいのですが」
「奈良?奈良にはおい、真吾の自治体病院があるだろが?そここそ関連病院の第一号だ!」
「ええ、さっき話してたとこです。それが・・・」
「なんだって?」
「まだ何も言ってないでしょうが!」
「でもなんとなく分かる」
沈黙。
「・・・連絡が取れないのです」
「真吾とは半年くらい電話に出てくれない。忙しいんだろ」
「病院にさえ、連絡が取れないんです」
「お前。よっぽど嫌われたみたいだな」
「違いますって!」
シナジーは鳴らした携帯をオンフックした。
<ゲンザイ、ツカワレテオリマセン>
みな絶句。パソコン、ケータイを同時に開き、たたんだ。
「(一同)本当だ。通じない」
事務長は携帯を内ポッケにしまった。
「みんなで押しかけましょう」
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