病院の暗い地下、いきなりブルルン、とライトがまぶしく光った。ふだんは、霊安室から患者を車に乗せるときに使用する地下室だ。頭上、わずかな隙間から日の光。白いドクターカーに、力がみなぎる。
近くに、6両編成のトレーラーが眠っている。ドクターズ・トレーラー、略してドクトレ、まては<毒取れ>と勝手に名付けられた。
なかなかクーラーがきかない中、ユウはシートベルトを締めた。
「ふ~いふいふい!田中君の運転は怖いからなあ・・・!」
「そんなこと、ないっすよ!」彼が運転。
「事務長!」振り向くと彼は・・・・後部シートで寝ている。
近く、ザッキーが座っている。
「おいザッキー。総回診のときとか、ちゃんと来いよお前!」
「ムニャムニャ・・<お前>はやめてください」淡々と言う。
「お前の検査の腕は認める。けどな。それだけで渡っていけると思うなよ」
「長所は大事にしなきゃ・・」
「ちっ!」
若い人間をうまく育てられない・・・戦争を知らない世代の悲痛な叫びだ。
真田病院が未だに教育病院にまで育っていないのも、仕方なかった。教育に時間を割けば割くほど、お客とお金は手のひらから落ちていく。多忙のせいにしてはいけないが、トシキ以外はほとんど公的な<資格>を取ってない。
折れそうなほど首を後屈していると、ザッキーが前を指さす。
「はあ?前が何だ?うわあ!」
急な坂を、ドクターカーは一気に駆け抜けた。インターチェンジを前に、田中はギアを変えた。
「高速に乗ります!」
「(その他)わあああああ!」
ズドン!と車は点となった。
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