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2009年6月11日 連載
真田病院の2階、事務ベランダからトシ坊、シローは見送った。

「シロー。あんな開業医なんか手伝うな。ってしつこく言う、ユウ先生の気持ちも分かれよ」
「・・・・・」

「松田クリニックの松田院長は、かつて僕らと戦った先輩だ。だが正直、医師としては認めてない。患者を金としか思ってない。下品だし、誤診も多い。あんな無能なドクターの下にいて、君は恥ずかしくないのか?」

 ユウがいなくなると偉そぶるのが彼の嫌味な特徴だった。それにしても、シローは返事もしない。

「お金がそんなに大事なのか?サラリーマン以上の手取りがあるはずだ。それを申し訳ないと思わないのか?まあ家族の複雑な事情は・・ごほん」

 シローは何か<影>を抱えているようだった。皆がそれとなく気づいてる引出しの<離婚届>には、何か奥がありそうだ。

「・・・・・・・」

「松田クリニックは、何でも真珠会病院の下請け診療所という噂だ。真珠会であぶれた患者が、あのクリニックに命を授ける。しょせんクリニックだ。何の技術も必要とされないし、身につくこともない。傲慢だけが育つ。だから開業医はわがままなんだ」

 自分の性格を棚に上げ、トシキ節が展開する。

 しかも知らない間に、白いチワワがしっぽを振っている。熱中したトシ坊は、それすらアウトオブ眼中だった。

「だからシロー。どうか今後は、ゆくゆく開業する関連病院の院長を希望するとか。つまり今後の身の振り方をだな」

とたん、バババ!と花火が前方で打ちあがった。

「(2人)うわ!まぶし!」

何重ものヒュ~音が。やがて上空で・・ババン!と心臓に響いた。

ドン!と大きな花火。

シローは合図に呼応するように、うなだれた。

「すみません・・・」
「はっ?」
「す、すみません・・・お、お受けできません」どこか涙声だった。

 チワワがゆっくり近寄る。火薬の匂いが喉に痛い。

 耳をすますと、わずかなデジタル音。トシ坊はその首輪に注目した。
ダッ、とチワワは駆け出した。

「しまった!チワワ、いや首輪盗聴器だ!シロー!今の会話を聞かれた!」

1人でも騒がしい男だが、今度は驚いて当然だった。

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