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2009年6月11日 連載
大きな大空が拡がった。満点の星空。虫の鳴声。スライドしたドアからやや涼しい風。

「おい。ここは・・・?」

 学校の校舎?まるで夜の。そう。窓も真っ暗で生気がない。でもここは病院のはずだ。病院が休みだからといって、病棟があるなら全部消灯まではせんだろう。いや、するか。それにしても電気が・・

「止められた?」と田中。
「あのなあ・・・自治体が貧乏でもそこまでは」ユウは呆れた。

いつの間にか、品川は起きている。
「玄関前まで、行きましょう。とりあえず!」

 警戒しつつ、ドクターカーは玄関前へ徐行。しかし、数台の巨大なトラックが立ちはだかる。

「新規の改装工事中かな?」ユウは巨大なトラックを見上げた。
「さすが自治体だ。恒例の税金無駄遣いですよ!」ザッキーが突っ込み。
「こうやって税金使わんと、次の予算が降りんのだろ?経済って不思議だな。無理やり需要を作るもんな!」
「医療もそうじゃないっすか?病人がいるから・・・」

みな、しらけた。

「シッ!」事務長が制した。虫の鳴声だけだ。
ドクターカーのエンジンが止まる。

トトト・・・プルル、トン。止まった。最近、よくエンストする。

 玄関前も、暗い。まるで死んだ町だ。みな車の周囲に立った。無音。いや、カエルの鳴き声は別。ユウは南を指さした。

「目が慣れてきた。あそこのスタッフ用宿舎もほら。電気がついてない」
さきほどのナースが洗濯物を気にしていた宿舎。静寂と闇が支配する。

「夜逃げしたんですかね?」ザッキーがあちこち、駐車場を走った。
「こら!あちこち行くなザッキー!」

彼はハイになって、走り回っていた。いつも都会にいるからか。

「ここがS状結腸で!ここが!」
「こんなとこでイメージトレーニングなんかすなボケ!」

しかし。宿舎も停電とは・・・?

田中は病院の正面玄関をガチガチ引いたが、鍵で閉まってる。

「ははぁわかったぞ。どうやら新装オープンのための、院内旅行ですかね?患者をどっかに預けて!」
「ありえんだろ。仮にそうだとして。それで宿舎のほうもカラか?」品川が目を閉じる。

「宿舎の家族も旅行招待とは、ラッキーですね!これじゃあ、やっぱり医療は崩壊する!」

品川は全く腑に落ちてない様子。

「そこまで?誰の金で?」
「そりゃ・・・自治体が」
「自治体がそこまでするか?」
「そうですよ。だから!医療が崩壊するんですよ!うっ?」

みな、鎮まった。田中はトラックを見上げた。

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