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2009年6月13日 連載

役場の出口を出ると、容赦なく太陽が照りつける。

とたん、シナジーのケツが蹴飛ばされた。
「あたっ」
「おい。品川・・・ちゃんとしてないから!お前が!」ユウはまた蹴ろうとし、シナジーはよけた。
「権利が自治体へ移るまで、管理はやってました!」
「話が違うぞ。村長の話では、自治体が丸投げしようとしてそれを真吾が買って出た。これまでのお前の話では、お前ら経営側が自治体に・・」

シナジーは田中君と顔を合わせた。

「うーん・・」
「何とかいえ!」
「ですから。それもオーナーが」
「だる・・・お前はオーナーが死ねといったら死ぬんか?」
「はい・・・」
「モアだる!どうなってんだ・・・」

借用書のコピーに<3000万円>とある。

「だんだん分かってきたよ。病院経営の存続には金がいる。院長は運転資金を調達したんだ。かなり悩んだんだろうよ。きっと消費者金融か何か・・」
「消費者金融に3000万円なんて、いきなり借りれますかね?」
「そりゃ企業とかよ。開業資金を、医療機械屋が負担とか、あるだろが!」

 ユウは怒りのやり場に困った。だが怒りは増していく。実感が湧かない分そうなる。

 田中君は話をまとめた。

「つまり運転資金が回らなくなって。村長は知らんふり。病院崩壊を恐れた院長の真吾先生が、仕方なく名義を自分にかぶせた。スポンサーを発掘した上で。で、催促がきた。経営はストップ、病院の物品が持っていかれ職員らは退かざるをえなくなった・・・」

まあまあ、正しい線だった。

引き続き玄関を出て、ついてきていた村長の表情は、相変わらず腑に落ちない。

「単に個人の交渉で、巨大な赤字を補てんなんてできますかなぁ?」
「いたのかよ・・・・・おい事務長。こんな奴らに協力したのが、そもそもの間違いだったんだよ!」
「・・・・・・・」シナジーはまた狼狽しきった様子。
「村長さん。アンタがよその病院に受診していること自体、もうそのときすでにこの病院は見放されていたんだよ!」

村長はそれがどうしたといった様子。
「知りません」

「人でなしが。ああ腹立ってきた!」
「大袈裟な。文句があるなら、厚生省を通して抗議してください」
「おぼえとけ!」
「はい。覚えときますよ」
「うるせえ!」

ユウは荒くなった。

やがてみな、力なく役場をあとにした。

さびれた喫茶店で、高すぎるメシを食う。

「クソ!クソ!」
食事中だが、怒りの言葉を探しまくった。
「クソクソ!」

田中君が困り果てていた。
「先生。食事中にクソは・・・」

「あんな奴らが上に立つ限り、僻地に未来はないだろ!」

本心でないながら、ユウはパンが喉を通らなかった。


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