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2009年6月13日 連載

新装オープンのクリニックは2診制。さっそく診療は始まっている。

シローの診療室で、患者1人3分のペース。補助のナースらがそうもっていく。

「では、採血をして!結果をお待ちください!」シローが威勢よく。
「仕事の都合で、早く帰りたいんだが!」モンスター患者。
「では封書で本日遅らせていただきます!」
「今日?」
「はい!本日中にバイク便がお届けいたします!」
「ほう。広告通り、便利な病院だな!」
「ありがとうございます!」

玄関でも、外人とおぼしきスタッフらがしきりに頭を下げている。

補助のナースがケケケ!と笑って隣の診療室へ。松田院長がまだ来てない。

「繁盛繁盛!マージンもらうで!あん?」
「本日から、お世話になります」ペコッ、と若いショートカットがおじぎして立っている。

 美しくも精悍な顔立ちに、おばさん師長は少し気を取られた。宝塚男優のようなオーラを感じた。

「あんた!美しい男みたいやねぇ・・・」
「その字の通り、美男子とよく言われます。でも女です。募集で採用になりました。藤堂と申します」

 明らかに作った演出なのがまた宝塚だった。どことなく姿勢が崩れているようだが。多少足をひきずっているのは周囲には気付かせない。

「あんたみたいな新人が、院長先生のサポート?ふーん・・・よろしく頼むわよ。いままで何人もクビになってるから」
「頑張ります」
「クリニックも新天地で最初が肝心や!トラブルないようしっかりやりや!」

 若いナースの頭の先から下までアラを探すが・・・ない。自分の脅威になる可能性はある。ならばどうやって苛めてやるか。出る釘は打たれる運命だ。彼らにとって新入りは、無気力で魅力なき笑顔になるのが理想的だ。

「松田先生はね。すごく気が短いんだ。あたしゃ5年以上付き合いがあるんだ。まぁそこはコツがあるんやけどな!」
「・・・・・・」

<藤堂ナース>は不気味に沈黙を守っていた。師長は履歴書を読む。

「あんた、ナースをやる前は?」
「営業とか」
「・・・よう分からんやっちゃね」

 自衛隊の話はできない。なので<国業>と話すわけにもいかない。とにかくこれ以上の会話は、組織の役にも立たない。

 今は淡々と、次の任務をこなすのみ。



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