受付が、積み重なったカルテの山の間にさらに、また1冊しのばせる。
「えっ?ワリコミ?」藤堂ナースは少し驚いてみせた。
「あ。これ。信者さんですので」クールなヒラ事務員。
「信者・・(小声)ああ。例の宗教の」
松田院長は噴き出した。
「俺は教祖ちゃうで。はは。俺も入信させてもろとる宗教やで。ま、これは信者割引みたいなもんやな。特典や特典!ワリコミ特典!がはは!真珠会と、この宗教法人が俺のオーナーや!」
「・・・・・」
「いや実はな。もう1つオーナーがあんねん。ファンドって知ってる?」
「いえ」
わざとらしく、とぼける。
松田はまたパンを食べる。忙しい奴。
「前2者は双方とも経営が厳しくてな。日本の組織はもうダメやねん。今は海外のファンドっちゅう銀行同然の会社が助けてくれるねん。まあ裏はあるやろけどな。でも俺はええねん。誰が主人だろうと、飼い主の手は噛まへんライダーや!ははっ。かまへん?かまへん?」
世代が世代で、通じない。
藤堂ナースは秘かに思った。
「(宗教との癒着は噂通りだ。それでココの病院は患者が多いのか。無視はできないな・・・)」
足津の言う通り、ここは乗っ取る価値が大いにあると目論んだ。
「いつっ!」思わず藤堂は目がひきつった。腰を押さえた。
「どした?ん?」松田が腰を触ろうとしたが、一瞬ではねのけた。
「すみません。いいですから」
転倒したときの傷が痛んだ。思わず手をやった腰には、大事な<装置>がある。これは悟られてはならなかった。
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