時間が過ぎ・・・12時。音楽がなり、受付が強制終了。待合室の近くの食堂、大広間がオープンした。いくつものリクライニング。広大なリハビリ室。みな歓声をあげ、散らばっていく。数十人の患者たちが午後診療に回され、さらに待機となる。
スタッフも1人ずつ、休憩室へ。しかしそこに直立不動。みな院長を待っている。院長の診療が終わらなければ、席につくことも許されない。
やがて院長はシローの診察室をのぞいた。
「ハロー!閑古鳥くん。これからそう呼ぼうっと!」
「あ。すみません。うつろうつろと」
「患者数少ない場合は、冷暖房禁止やで」
「あっ・・はい」
「げんじつげんじつ!」
「・・・・」
シローは馬鹿にされても、耐え続けていた。
さて、休憩室ではすでに20人ほどのスタッフが立っている。
<(一同)松田院長!お疲れ様でした!>
「すわれ」
ドドド、とみな上目遣いで座る。
「あー。ピザは?」
「スミマセン・・・」中国人らしき男性が謝る。
「ロンさん。また忘れたのか?注文」
「スミマセン、スミマセン・・・」
「ったく。スミマセン言えば許してくれるとでも思ってんのかボケ?」
「スミマセン、ソノスミマセン・・・」
「最近のジャップはな。ファーストファッキンフーズづくめで短気なんだぜ。新聞見てみい。殺人事件ばっかりや」
シローは気まずそうに腰掛けた。院長は食べ始め、みなそれに続いた。
「あ~あのな。この先生はみなご存知の。非常勤でうちに来ていたシロー先生。あの悪名高き真田病院の、もと常勤医!今回、俺の推薦でここの常勤に昇格した!ここで永久に重労働に励んでもらう!」
「え、ええ・・・?」
バン!とシローは肩を叩かれた。
「嘘やがな。ま、ここのほうが高給だしな。辞める理由もないだろ?シロー。でも俺にずっとおんぶにダッコじゃいかんよな。さっきの外来みたいに。へっぴり腰な医者がおってみ。患者さんは逃げる!そうだよなみんな!」
「(一同)・・・・・」
「モジモジした男に、女の子は近寄ってこんだろう?はは」
みな、無条件でうなずく。
「へっぴり・・・」
「そうだよ。お前のこと」老人の忘れた杖で、松田が頭頂部を叩く。
「いた」
「お前のこと!」
「たたっ!」
「はは!お前のこと!」
「いたた・・・・」
「結果を出さな!結果を!」
何回も叩く。
みな、ウンウンと過剰にうなずく。大半が外国人。みな顔色のみをうかがっている。
「診察室でこんな頭下げて、寝るようじゃあ・・・未来はないわな。で!ローンはあとどれくらい!」
「松田先生。そんな話はここでは・・・」
「だからどれくらい残ってるって!言うてんねや!」
沈黙が流れた。
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