「奥さんが宗教本部へ逃げて!多忙な隙に子供まで連れ出されてやで?慰謝料やら養育費やら家のローンやら宗教へのお見舞金やら!・・・全部、お前にかかってんのやろ?信心が足りないからと違うんか!」
「・・・・・入信はしてませんので」
「仏を信ずる心が足りんから、悪いことばっかり起きるんや!なぁみんな!」
また、みなが適当にウンウンと頷く。
「だからなシロー。ここのスタッフらと同じ釜のメシ食うならな。お前も正式に入信せえよ。宗教に入るだけや。俺と同じく男子幹部になろう。意地はるな。それですべてが戻ってくるんやと思ったら安い買い物や!おれな、その宗教やって正解やったで?嫌なヨメとも別れた!女子幹部にも大モテ。お前ならもっとモテるって。俺は若いエキスを吸いまくり、20は若返ったで?」
シローは抵抗があったが、どうやら入信するのは時間の問題のようだ。さすれば患者の支持も得られるだろう。権力を得て、脱退するという手は甘いか・・・。
かといって、ユウらに今さら助けを求めるわけにもいかず・・・。怒ってぶって、許すようなヒーローなどいるわけがない。
「(変わったな。松田先生・・・まったくの別人だ。同じ医局の出とは思えない)」
人間は、ここまで変われるのか・・・。
「ま。アカンやつには何度言うてもアカンわな」
プッ!とオナラが出たが、誰も笑う雰囲気ではない。以前、笑った外国人がクビになった。
「真田、ちょこっとだけのぞいたけどマバラなもんや。。これで救急患者まで減ればこっちのもんや。うちが全部の救急診たる。入院ベッドも用意したしな」
「入院も・・」
「ああそうや。病棟も診ないかんのやで?シローさん。帰る暇ないで?それくらいの覇気がないといかん。覇気が!そう俺と!お前で!」
「松田先生。2人では・・・」
「診れるって。売上げ上げたら、そのうち死ぬほど医者、増やしてくれるって。新オーナーがな。オーナー名はお前には言わんけど。そういう約束や。なー藤堂ちゃん!あの名前、ぼくら2人のナイショな!」
ドアの向こう、ゴソゴソ音がする。中国人男性がドアを開け・・・チワワを連れてきた。
藤堂ナースの足元で甘える。彼女はかがんで、お手を命じた。
松田は彼女のこぼれそうな胸元を、何度も横から覗き込んだ。
「ほんま、ええナースが来よったもんやな・・・へへへ!」
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