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2009年6月15日 連載

 藤堂おやじが、サッとベッドを横流し。シローはいっしょに走りつつ受け取った。

「状態は?隊長さん!」
「<診ての通り>や」
「くそっ!」

 シローは声かけ、痛み刺激を確認。痛み刺激はあり。脈、酸素飽和度。

「口の中、服に吐血の跡!ナース!救急物品のカートを!」

 誰も、出てきてない。

「もう1人は!」
右ポケットからチューブ。鼻から入れ、もう1つ受け止めるベッド。

「この人も中年。うわっ?」
ベッドに大きな振動。けいれん発作。脈は触れる。今度は左のポケットに手をやる。

「隊長さん!教えてください!」
「・・・・・」隊長はそっぽを向いた。
「そうかい!」

 右手で入ったチューブから血液。やや黒いか・・赤いか。定かでない。
「このチューブじゃあ、その場のみだ!」
 左手に右手を加え、注射器に少量の液。

2人目の患者の静脈にダイレクト、注入。へパリン入り注射器と交換。

「待て!」
通り過ぎようとするベッドを右足で止める。
「ぐぅ!」

 高齢者、呼吸困難。一方、白衣についてるテープで胃チューブを固定、チューブはプラプラと回り、床やシローの白衣を染めていく。

「いくぞ!」

 持ってきていたアンビューで、片腕で収縮、拡張。片腕はポケットに突っこんだまま、食塩水入り注射器。チューブの中を通す。

「痙攣患者は・・・おさまったか!呼吸は!救急物品はどうした!くっ・・!」

 近くの藤堂はすぐに凝視した。シローが近くに置いてあるバッグを足で奪った。

「カートを取りにいけ!」
「俺の商売道具を盗むのか?」
「取りにいかなければ、つぶす!」
「わわ、わかったよ・・・」

 藤堂は両手を挙げ、人質のように歩いて行った。

 痙攣の患者は安定化、呼吸も落ち着いている。呼吸困難の人はこれでは効果なし。胃洗浄はほぼ片手で何とかできている。

「早くしろー!隊長!酸素もだぞ!」

 隊長はカートを足で蹴り、シローは足で受け止めた。酸素ボンベも転がった。隊長は私物を床から拾い上げた。

 シローは背中から挿管チューブを取り上げ、カートからの喉頭鏡でノドの奥を観察。視野の右手前から斜め前に押し入れるチューブ。
「入った!」
 くっつけたアンビューをシュパシュパし、酸素飽和度の上昇を待つ。胃洗浄1回。またシュパシュパ。洗浄。

「出血は続いてるな!」
 シローは何を思ったかチューブを抜去、カートから取り出すバルーン付きチューブ。

 チューブが同様に鼻から入り、腹部に聴診器当てる。
「よし空気!」
 50の注射器で空気が4回ほど、チューブ引っ張り感覚で止める。

 呼吸困難患者の酸素飽和度は96%まで上昇。簡易モニターをベッドの上に置く。パチンとメスを取り出し・・・自分の足元、いや靴の紐を切る。

「てい!」
 ベッドの横、点滴台を上に向ける。ヒモがチューブから伸び、点滴台を通して大きな点滴が1本つりさげられた。
「いいバランスだ!」

 シュパシュパ、今度はマノメーターの加圧。
「止血してくれよ!」
 人工呼吸器に辿り着くべく、シローは挿管患者のベッドを引っ張った。あとの2台は残りの紐で結ばれている。

「道を開けろおおお!」

 騒然とする待合室を、シローは血だらけの白衣でベッドを引っ張り続けた。








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