クリニックの敷地内に入るなり、自転車はそのままズササと横に滑走していった。藤堂は振り向いた。
「おまえ・・・」
「お前はやめ!わーっ!」ユウは恐怖でサドルを片手放せず。
思わず、その片手ブレーキに力が入った。
<キイイイイイイイイイイ!>
「うわーっ!」隊長や数人のスタッフは両耳を押さえた。ガッシャア!と救急車3台のガラスも何枚かヒビ入る。
近くにいた娘も、何度も首を振り続けた。
「ぬぅうう!何!」
ユウは割れかけの玄関に入った。血の跡を本能的に辿る。
「シロー!シロー!」
「(待合室)うわああああ!」
「おいじいさん!なんでそこの病院にいる?浮気者!シロー!シロー!」
ピーピーとアラームが聞こえる部屋へ。予想どおり、シローの困り果てた表情が見えた。
「何やってんだ!お前!」
「ぐぐ。ぐるじ・・・」
点滴つるしの紐が、なぜかシローの首に絡まっている。
「あああ!抑制だ抑制!」
ポーチの中から細いヒモ。これで何とか固定する。
「物凄い力だ!」
「でしょう!」シローは呼吸器の設定をし直した。
「次、2人目!することは?」
「れ、レントゲンでの確認・・・」
ユウは縛り終わり、近くのレントゲンへ。シローはベッドを引っ張ってきて1台ずつ切り離し。
藤堂隊長が走ってきた。
「あと5台来るぞー!5台!」
ユウは撮影室のボタンを押した。マイクに向かう。
「CTは?」
「5人来るようです!」
「誰が?」
「救急が!」
「そんなに受けたのか?」
「僕ではないです!」
ユウは撮影を終わり、患者の残りの処置にかかった。
「なんて奴らだ・・・!」
シローは近くの部屋、院長室のドアを叩く。
「松田先生!先生!お願いします!」
近く、外人2人が腕組みして威嚇している。この部屋の中で院長がいつも誰とアレをナニしているのかは公認のものだった。
「手伝ってください!先生!」
「手伝いに来いやあおい!」ユウは携帯に吠えた。
シナジーは携帯から耳を離した。
「先生。こっちも救急が来ます。先生のほうこそ手伝いに来てください」
「こっちは5人来るぞ!」
「こっちも5人!」
「俺ら2人!そっちは大勢いるだろ!」
「だってオーナーが!」
「逃げるな!あっ」
切られた。
シローはドンドン!とドアが凹む勢いで叩いた。腕を横から取られた。
「えっ?」
「インチョウ、センセイハ、オヤスミチュウデス」
「話してくれよジョンソン!」
「ヨウジガスムマデ、ココニハイッテハイケマセン」
玄関方向から、ユウが両手を口にあてた。
「シロー!来るぞ!」
「あっ、はい!」
シローがドアに背を向けたとたん、ドアがその背中まで吹っ飛んだ。
「うわあっ!」
松田院長が不機嫌そうに私服で出てきた。
「なんじゃあ。ワレ・・・」
シローは倒れ、うぐぐと苦しそうなままだった。
ユウは両手を下ろした。
「シロー・・・あれは松田?きさま!」
しかし余裕がない。5台をバックオーライする隊長が目の前に。
「オーライオーライ!」
「隊長」
「オーライ!」
今度は、ユウがピキン!と背のチューブをつかんだ。左手はやはりポーチ。
「あとで、殴らせてもらう!」
ポーズが決まった。またまた後ろの柱の横、藤堂ナースが垣間見た。
「トイレ行きたくて、漏れそうなんだけど・・・!」
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