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2009年6月18日 連載
千里中央の大屋敷。

足津が寝そべり、上から背中をマッサージしてもらっている。ひたすら読書中。

「・・・?」

バットが映ったかと思うと、画面が粗くなり瞬く間に消えた。足津は仕方なく、別カメラのプレイバック画面に切り替える。

テレビには、チワワを通した場面。途切れ途切れの静止画。松田院長の横顔がアップ。

「・・・」

<ご報告です>と藤堂ナースの声。
「今のような感じですね?」

<どうでしょうか?>

「ま、簡単に試してはみましたが。ドクターシローは戦力として利用できます。株主の多数決もあって合格です。もう1人の人材にも要望がありましたが」

<あれは、真田病院の>

「知ってます。あそこを落とすのは時間の問題ですので。その際に安く買い叩きます」

<はっ>

「今後はドクター松田は一般診療どまり。ドクターシローは救急および2診といったポジションで。このあとの<作戦>のあと、こちらに正式抜擢の予定です。役立たずになれば、そのときに潰せばいいというのが株主らの一致した意見です」

<この流れの続行ということで?>

「ええ。焦ればミスも出やすいのは医療と同じです。大学病院への攻勢の手始めとして、次のターゲットを設定しました」

<それよりも大学病院を。私は一気にたたみかけたいと・・・>

「私情を挟まず、最初のストラテジーに従ってください。株主の意向が優先です。あくまでも契約書類上、計画を進行させます」
<ですが・・・>
「書類に、もう一度目を通してください」

末端スタッフが近づいた。
「ではそろそろ・・・先生」
「はい。早速駒を進めてください」

足津は3ケタを押した。

「真珠会の会長様ですか?」
<は?ああ!足津さん!>

今や人形同然の会長が電話で飛び起きた。

「出動要請です。名誉教授の息子さんの病院、ご存じですね?」
<はい!あそこはもう経営がガタガタでして。ですが売るつもりはないと>

「出動の準備をお願いします。私も見学します」

電話を切り、足津は立ち上がった。

大きな窓が左右に開き、勢いのある風が入ってきた。
ブオオオオオオ!と、それは部屋の中の書類を散乱、いやダンスのように舞わせた。

真っ白なヘリが、広大な庭に足元おぼつかず着陸していく。



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