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2009年6月22日 連載

教授は話題を現実に変えた。

「で。教授会からの催促なんだが。今後は当直医の人数を充実させ、パニック時には待機の人間が順番に出勤することにする」

「(一同)順番・・・」

「経験年数、専門も考慮するが、まずは近隣に住んでいるものからだ」

「(一同)えええ~!」
「ちょっと待ってください。一度コールを受けた人間はそのまま?」とヒラ医師。

「・・・いや、上司の許可があればいったん退散でいいと思う」
「1人患者を診て落ち着いたら、もう帰っていいってことですね?」と島。
「あーいや。そこは医局ごとの方針らしい。諸君らが決めるべきことで」

 連絡票などが張られた。頂点に教授だが、その直下はノナキーの名前。

「うちの医局は、なにもここだけが人員ではない。関連病院のOB関係すべてがスタッフだ。これまで面倒を見てきた義理を、果してもらわねばならん!」

ノナキーはやっと顔をあげた。
「今、周囲の各関連病院に打診しています。ピンチ時の代打としての非常時出勤を当番制にして・・」
「ほう!さすがだな!」

 パチパチパチ、と拍手が渦巻いた。しかしほとんどが断られている実情があることを、まさかここでは・・・。

 島は大きく頷いた。
「そんだけ医者がいればですよ?24時間病院は回せますよ!向こうもそんなにネタはないでしょう?」

 教授は窓を開けて空を見上げた。

「それだけの患者を搬送してくる、相手の懐というのがどうも分からんな」
「どうやら・・・」

ノナキーは腕組みした。

「某クリニックが、たえずその病院に患者を<供給>しているようなのです」
「重症患者がそんなコンスタントに生まれるものかな?重症化する予定の患者を、多数抱えているというのか?」

 ノナキーは思わずバラした。

「ですが、あの松田クリニックなら。しまった言ったか」

「(一同)えええっ!」

「もう言おう。いいか。松田クリニックが温床だ。恥ずかしながら、そこの院長は僕らの先輩だ。軽症ですむ患者を引っ張って引っ張って・・・送る先は信じたくはないが、真珠会」

 教授は頭を抱えた。

「松田というのは・・・わしは会ったことはないが。うちの医局出身だって?」
「俺たちはよく知ってるよな!島!」
「はい!バックボーンが宗教団体っしょ?そのうち世界が地震で滅びるっていう!あはは!ホントに滅ぼしたりしてな!おおっと」

 みな騒然となった。

 教授は眼を丸くした。
「宗教・・・テロリストなのか?」

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