教授は話題を現実に変えた。
「で。教授会からの催促なんだが。今後は当直医の人数を充実させ、パニック時には待機の人間が順番に出勤することにする」
「(一同)順番・・・」
「経験年数、専門も考慮するが、まずは近隣に住んでいるものからだ」
「(一同)えええ~!」
「ちょっと待ってください。一度コールを受けた人間はそのまま?」とヒラ医師。
「・・・いや、上司の許可があればいったん退散でいいと思う」
「1人患者を診て落ち着いたら、もう帰っていいってことですね?」と島。
「あーいや。そこは医局ごとの方針らしい。諸君らが決めるべきことで」
連絡票などが張られた。頂点に教授だが、その直下はノナキーの名前。
「うちの医局は、なにもここだけが人員ではない。関連病院のOB関係すべてがスタッフだ。これまで面倒を見てきた義理を、果してもらわねばならん!」
ノナキーはやっと顔をあげた。
「今、周囲の各関連病院に打診しています。ピンチ時の代打としての非常時出勤を当番制にして・・」
「ほう!さすがだな!」
パチパチパチ、と拍手が渦巻いた。しかしほとんどが断られている実情があることを、まさかここでは・・・。
島は大きく頷いた。
「そんだけ医者がいればですよ?24時間病院は回せますよ!向こうもそんなにネタはないでしょう?」
教授は窓を開けて空を見上げた。
「それだけの患者を搬送してくる、相手の懐というのがどうも分からんな」
「どうやら・・・」
ノナキーは腕組みした。
「某クリニックが、たえずその病院に患者を<供給>しているようなのです」
「重症患者がそんなコンスタントに生まれるものかな?重症化する予定の患者を、多数抱えているというのか?」
ノナキーは思わずバラした。
「ですが、あの松田クリニックなら。しまった言ったか」
「(一同)えええっ!」
「もう言おう。いいか。松田クリニックが温床だ。恥ずかしながら、そこの院長は僕らの先輩だ。軽症ですむ患者を引っ張って引っ張って・・・送る先は信じたくはないが、真珠会」
教授は頭を抱えた。
「松田というのは・・・わしは会ったことはないが。うちの医局出身だって?」
「俺たちはよく知ってるよな!島!」
「はい!バックボーンが宗教団体っしょ?そのうち世界が地震で滅びるっていう!あはは!ホントに滅ぼしたりしてな!おおっと」
みな騒然となった。
教授は眼を丸くした。
「宗教・・・テロリストなのか?」
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