真田病院。
「おい!なぜ20人もクビにした!」
白衣のユウは、事務長室に入ってきた。ミチル師長が後ろに。
「何とか言え!」
「私じゃないんですって!もう!」シナジーはそっぽを向いていた。
「スタッフらは驚いてるぞ。いきなり張り紙する奴がどこにいる!」
あちこちで、パニックな声が飛び交う。
「私だって悲しいです。でもオーナー側がメール送ってきたんです!」
「オーナー?なんてオーナーだ!新しいオーナーになって、妙なことばっかりだ!見せろ!」
ユウはパソコンに手を伸ばしたが、間一髪でシナジーはメールの情報を消去した。
シナジーは立ち上がった。
「松田クリニックができて、こちらの経営がさらに悪化。それは先生もう、有意差ありです」
「だ。だけどよ?な、何もリストラなんて・・・」
シナジーは真剣だった。
「当院だって、慈善事業ではないんです。それなりの利益を生まなければ、潰れるだけです。人件費抑制もやむを得ない!会社だってそうでしょう!」
「俺たちも頑張ってるさ!精一杯!でもしょうがないだろ!患者が来ないんだからさ!そこが会社と違う!」
「じゃあドクターが何とかしてくださいな!」
「てめえが患者を連れてこい!」
「病院に求心力があれば!近くに病院ができたって!来る患者は来続けるんじゃありませんか?惹きつけるものがないって証拠でしょ!」
「歯、くいしばれ!」
「おまえらええ加減にせいや!」看護部長のミチルが切れた。
「(2人)え。だってこいつが!」
「シロー先生はいきなり辞めるしどうなっとんねんこの病院は!僻地の病院も夜逃げしたって噂やないの!」
ナースら苦情を背負っての、代表質問に来たのであった。
シナジーは口に人差し指をあてた。
「シロー先生のことはオフレコだよミチルさん!」
「何言うとんや。みんなもう知ってるで。そりゃな。こんなガタつく病院だったらハン。シロー先生も逃げるわな」
「私にはどうにもできなくて!」
ユウは制止した。
「でな。話戻すようだけどな。俺がこうして来たのは。その新オーナー。経営者とやらに・・直に談判したいんだよ。会わせろってことだ」
「せや。あたしもそれに関心がある」
ミチルもつぶやいた。
「給与明細見て、みんな怒ってるで。いつもよりさらに減額されとる」
「えー?」シナジーはわざとらしくのぞく。
「そうかな・・・これも実績の反映かな?」
包帯づくめのザッキーが、はるか後ろから現れた。
「皆の士気が落ちちゃうよ!こんなことして!ちゃんとした説明がないと!」
「説明・・・ですか」
「新しいオーナーが誰かとは言わないから!ここに来ないんですかその方は!」
シナジーは真顔になった。
「ち、近いうちにここに来られます・・・じゃあ来月ってことで」
みな、うつむいて携帯のカレンダーに入力。
ユウらは医局に戻った。
「ダメだダメだ。このままじゃ、この病院はホントに潰れてしまう。ホントはオーナーがどうとか、もめてる場合じゃないんだ」
ピートが服をアイロン中。
「落ち着け。ユウ。最近変だぞ」
「分かってる。分かってるんだが・・・」
「大学がえっらいことになるようだぜ」
「なに?」
「挑戦状が来たとよ。救急ラッシュがきっかけらしい。学長が宥めたそうだが、どうだか。これからどうなるかだぜ。それとICUの医者は、もうダメかもしれんのだってな!お前のもと医局員だろ?」
「なに?同じ医局員?ノナキーはそこまでは・・・」
「おいおい。もう一部の人間は知ってるサ」
「ICUにいる医者・・・」
いったい、誰だ・・・。ユウには知るよしもなかった。
「(まさか、ノナキーの奴・・・まさかな・・・)」
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