トシ坊は防護服、ゴーグル。手袋の両手でバサッ、と水色の布をかぶせた。
「透視!」
腕から入ったカテーテルを、技師のサイドから追う。トシ坊の手元でも微妙に視野を操作する。
両目が画像、モニターの心電図を交互に行き来する。一瞥ごとのフィルムを頭で積み重ね、違いを認知しつつ次の行動に出る。
カテーテルが大動脈に当たる。あるはずの冠動脈の入口。右の冠動脈の入り口。造影剤が若干入る。中途で途絶。左の冠動脈も狭窄はあるが・・・
「ここが今回の病変だ。ダイレクトにステンティングする!」
ワイヤーで若干の開存。技師の捜査で造影部がプレイバックされ、拡大投影。コンピューターで径が確認。狭窄部が数センチ。
「こりゃ長めのステントだな・・・!」
不整脈が頻発。手もとのキシロカイン注射を取り上げた。
ユウらは4人の処置を終え、2人が入院決定。4人とも、同室で桜田が診ている。ピートは2台のベッドを両手で引っ張ってきた。
「腹部に圧痛か!」超音波の写真をユウが確認。
「膵炎!」叫んだのは遅れたザッキーだった。
「きさま!どこ行ってた!」
「内視鏡、けっこう難渋してて!」
「どけ!」
ユウはザッキーを蹴とばした。
「ピート!膵炎だ!FOYあるか!」
「フサンなら!」ポーチからバイアルを投げ、ユウが受け取る。
ユウは腹に当てがったノートパソコン、それ経由のプローブで確認。
「心不全も合併・・・いや基礎疾患としてか」
輸液をやや少なめに調節。
不整脈の患者がまた1人。PSVTだ。注射で通常、何とかなる。
桜田が点滴をとっている。ユウの目に入った。
「桜田!それは後回しだ!フォローの続きはどうした?」
「落ち着いてます!」
持ってきたアンプルを取りだした。
近くのパソコン、ザッキーがマウスで操作。
「頭痛の患者の画像はと・・・!」
桜田が手をパーにして戸惑っている。
「あああ!あ!」
「え?」
ザッキーがパソコンから飛び出した。
桜田が診た不整脈のモニターが止まりかけ・・いや、動き出した。
振り上げた拳を元にもどし、ザッキーは脈を確認した。
「いったい、何をしたんだ?」
「こ、これ・・・」
どうやらATPを使用した。間違いではないが。
「いきなり全部を?きつすぎたんじゃないの?」
患者によると、苦痛はなんとか消失へと向かっていた。
ザッキーはパソコンへ戻ろうとしたが、次の患者が来た。喘息発作だ。
「血管が見つからねぇ!」
しかし、ナースが慎重に確保していた。
「すごいな。あんたはリストラさせないよ!」
桜田は、パソコンを確認。
「頭痛の患者・・・血圧は高いようだけど。画像は正常」
近くに技師が来た。
「血圧は若干、良くなったようだけど。患者さんは帰りたいって」
「帰るのは・・」
「近くの開業医にかかりつけがあると」
「な、なら・・・」
周囲の混乱ぶりを確認。
「なら、いいです」
別ウインドウを開示。
コメント