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2009年6月22日 連載

 トシ坊は防護服、ゴーグル。手袋の両手でバサッ、と水色の布をかぶせた。
「透視!」
 腕から入ったカテーテルを、技師のサイドから追う。トシ坊の手元でも微妙に視野を操作する。

 両目が画像、モニターの心電図を交互に行き来する。一瞥ごとのフィルムを頭で積み重ね、違いを認知しつつ次の行動に出る。

 カテーテルが大動脈に当たる。あるはずの冠動脈の入口。右の冠動脈の入り口。造影剤が若干入る。中途で途絶。左の冠動脈も狭窄はあるが・・・

「ここが今回の病変だ。ダイレクトにステンティングする!」

 ワイヤーで若干の開存。技師の捜査で造影部がプレイバックされ、拡大投影。コンピューターで径が確認。狭窄部が数センチ。

「こりゃ長めのステントだな・・・!」

 不整脈が頻発。手もとのキシロカイン注射を取り上げた。


 ユウらは4人の処置を終え、2人が入院決定。4人とも、同室で桜田が診ている。ピートは2台のベッドを両手で引っ張ってきた。

「腹部に圧痛か!」超音波の写真をユウが確認。
「膵炎!」叫んだのは遅れたザッキーだった。
「きさま!どこ行ってた!」
「内視鏡、けっこう難渋してて!」
「どけ!」

ユウはザッキーを蹴とばした。
「ピート!膵炎だ!FOYあるか!」
「フサンなら!」ポーチからバイアルを投げ、ユウが受け取る。

ユウは腹に当てがったノートパソコン、それ経由のプローブで確認。
「心不全も合併・・・いや基礎疾患としてか」
輸液をやや少なめに調節。

 不整脈の患者がまた1人。PSVTだ。注射で通常、何とかなる。
 桜田が点滴をとっている。ユウの目に入った。

「桜田!それは後回しだ!フォローの続きはどうした?」
「落ち着いてます!」
 持ってきたアンプルを取りだした。

 近くのパソコン、ザッキーがマウスで操作。
「頭痛の患者の画像はと・・・!」

 桜田が手をパーにして戸惑っている。
「あああ!あ!」
「え?」
ザッキーがパソコンから飛び出した。

 桜田が診た不整脈のモニターが止まりかけ・・いや、動き出した。
振り上げた拳を元にもどし、ザッキーは脈を確認した。
「いったい、何をしたんだ?」
「こ、これ・・・」

 どうやらATPを使用した。間違いではないが。

「いきなり全部を?きつすぎたんじゃないの?」
患者によると、苦痛はなんとか消失へと向かっていた。

 ザッキーはパソコンへ戻ろうとしたが、次の患者が来た。喘息発作だ。
「血管が見つからねぇ!」
 しかし、ナースが慎重に確保していた。
「すごいな。あんたはリストラさせないよ!」

 桜田は、パソコンを確認。
「頭痛の患者・・・血圧は高いようだけど。画像は正常」
 近くに技師が来た。
「血圧は若干、良くなったようだけど。患者さんは帰りたいって」
「帰るのは・・」
「近くの開業医にかかりつけがあると」
「な、なら・・・」

周囲の混乱ぶりを確認。

「なら、いいです」

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