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2009年6月24日 連載

 ユウはアパートに着いたとたん、床にドサッと荷物を落とした。同時に襲う安堵感に、脱力感。

「ひっさしぶりに帰ったな~!」

 持って上がった伝票は宅急便や光熱費関係。宅急便はすでに引き揚げられている。経済的に困ることはなくなったが、思わぬ出費や催促もある。学会費や税金関係だ。

「銀行に支払いか・・・いつ行けるんだよ?」

 風呂に入るためお湯がザー!と出ているが、体が重くて起き上がれない。

 天井を見つめ、いろいろ考える。

 僻地の病院のことは悩んでも仕方がない。友人の行き先不明が心配だが・・とりあえず生き残りの女医を育てる必要がある。大学の人員が減るということは、関連病院への人員も渋られる。

 なので、大学医局への入局者人数はかなり気になる話題だ。

「そういや、メール来てたな・・・」

 携帯のメールをかざす。大学の医局長、ノナキーの分だ。

< 大学スタッフを一堂に集め、来るべき救急ラッシュに備えての学長演説が行われた。スタッフには十分余裕はあるものの、教授会によるとあくまで当院スタッフは自己の業務を優先し、プライマリ的なものに関しては関連病院の力をメインとし・・・>

 文章に強引さと不器用さが混在する。あれこれ手直ししてるってことは・・・

「お前、よっぽど困ってるんだな・・・」

 携帯を閉じた。

<「僻地から戻って、人が変わったことに気づいてないの先生?」>
 さきほどの言葉を思い出す。

「気づいてないわけねえだろ!ちくしょう・・・」
 思い出すほど傷つくことが増える。何をもっても、それが隠せない。

ダダダ、と風呂が溢れそうになっている。

「ふろ、風呂に入らないと・・・ふ・・・ろ・・・」

 死んだように、寝入った。



♪ 

戦い疲れた兵士が今
帰って来たよ 帰って来たよ・・・・・・・




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