ユウはアパートに着いたとたん、床にドサッと荷物を落とした。同時に襲う安堵感に、脱力感。
「ひっさしぶりに帰ったな~!」
持って上がった伝票は宅急便や光熱費関係。宅急便はすでに引き揚げられている。経済的に困ることはなくなったが、思わぬ出費や催促もある。学会費や税金関係だ。
「銀行に支払いか・・・いつ行けるんだよ?」
風呂に入るためお湯がザー!と出ているが、体が重くて起き上がれない。
天井を見つめ、いろいろ考える。
僻地の病院のことは悩んでも仕方がない。友人の行き先不明が心配だが・・とりあえず生き残りの女医を育てる必要がある。大学の人員が減るということは、関連病院への人員も渋られる。
なので、大学医局への入局者人数はかなり気になる話題だ。
「そういや、メール来てたな・・・」
携帯のメールをかざす。大学の医局長、ノナキーの分だ。
< 大学スタッフを一堂に集め、来るべき救急ラッシュに備えての学長演説が行われた。スタッフには十分余裕はあるものの、教授会によるとあくまで当院スタッフは自己の業務を優先し、プライマリ的なものに関しては関連病院の力をメインとし・・・>
文章に強引さと不器用さが混在する。あれこれ手直ししてるってことは・・・
「お前、よっぽど困ってるんだな・・・」
携帯を閉じた。
<「僻地から戻って、人が変わったことに気づいてないの先生?」>
さきほどの言葉を思い出す。
「気づいてないわけねえだろ!ちくしょう・・・」
思い出すほど傷つくことが増える。何をもっても、それが隠せない。
ダダダ、と風呂が溢れそうになっている。
「ふろ、風呂に入らないと・・・ふ・・・ろ・・・」
死んだように、寝入った。
♪
戦い疲れた兵士が今
帰って来たよ 帰って来たよ・・・・・・・
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