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2009年6月24日 連載
真田病院の駐車場では、シナジーが演説中。

「皆さん、ご覧のとおり。正面にそびえ立つは、医師会の反対をも押し切って進出した巨大なクリニック。往診関係でかつて当院とつきあいのあった先生が・・・正直ショックを隠しきれません」

オークナースらがそわそわと大勢立っている。

「ま、嘆いてもしょうがありません。当院の収益はここ1ヵ月でかなり落ち込んでいますし、挽回をはからないと。リストラが新たに発表され私も正直心苦しい。しかし小泉政権同様、痛みを伴う改革は必要です」

(無言。冷たい視線)

「ですがこちらも黙ってはいません。女医の桜田先生の他にもう1名の助っ人が新任で入ってくれまして。まだお目見えには・・・おかしいな。ここは心機一転をはかろうと・・・?」

 シナジーの言葉が詰まったのは、何もユウ・大平が向こうからやってきた、つまり遅刻してきたことではなかった。

 いきなり乗り付けてきた、黒い救急車だ。サイレンは回ってない。

「あの・・・・・」エンジンが止まる。

 いきなりヤクザ風の大男が降りてきた。以前、トシ坊のケツを棒でねじった男だ。トシ坊は反射的に尻を隠した。その顔はどこか赤かった。

「(一同)うわあああ!」
「・・・・・・・」サングラスの向こうは見えない。

 続いて降りて来たのは、例の会長だった。

「品川!」
「はい?」
「・・・・・・こりゃ、ちょうどいい。はっは!」

 みな、ざわめきが起こった。

「怖がるな。助言に来た。私はもう、真珠会のオーナーではない」

詳細は違う。自らファンドに譲り、株主になった。

会長はマイクなしでも、声が通っていた。

「コンスタントに収益をあげていたとはいえ、となりのたかがクリニックに押されて利益が落ち込むとはなぁ」

大平は片手にさきほどのジュースをまだ持っていた。

「ユウ。大丈夫なのかここは?俺まだ来たばかりだぞ・・・?」
「借金でもせびりに来たのかな・・・?」

もとオーナーは主題に入った。

「当院、真珠会は本年度より、海外資本と手を組むことになった。ほれそこ、拍手してどうする。その海外ファンドの助言により、数々の病院を買い取ることに決めた!」

品川は腕組みした。

「足津のスポークスマンが・・・!」

会長は続けた。

「だが、貴院はもともとこちらとの付き合いがあるだけに、こちらとしても手荒なまねはしたくない」

トシ坊を棒でつついた大男が、拡声器を渡す。

<2週間以内に、ここを明け渡すことを勧める!その間、諸君らは次の職場に身を固めろ!その後は、当院のスタッフがここに結集することになる!・・・お前らの居場所はない>

 松田クリニックのノルマ達成期限も、あと2週間。どうやら何か最後のイベントが起きそうな予感。

 会長はすでに車。大男も片足突っ込んだ。

<あるいは激安の月給ででも、ここで骨埋めるか選べ!>

 ブウ~と、車は走り去った。


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