ユウと品川、その後ろに新入りの大平。ユウは煙が薄くなるのを待った。
「シナジー。この助っ人なら大丈夫だよ」
さらに後ろに立っていた女医の表情が陰った。
「・・・・・」
シナジーは頭を抱えた。
「買い取るとは言うものの。ファンドというのはあれですよ。買い取ったあとは、病院を潰そうがどうしようが勝手ですから」
「病院のことなんか分からん集団だろ?」
「いや、彼らは調べつくしてますよ」彼は周囲をキョロキョロ見まわした。
「犬なら、いないよ」ユウはスタッフらと1人ずつ握手した。
<この前はすまん。だからチャラな>という意味も含んでいた。病院では常に人と人がぶつかり潤滑油が必要だが・・・そんな便利なものはない。次の機会が犠牲にならぬよう、数々のわだかまりをリセットしていく必要がある。曇った人間関係はこうして早めにチャラにしていく。
こうして何とか、仕事への悪影響は回避できていた。
一方の大平は、あちらのほうで士気を高めようとしていた。
「大平!わたしは世界の大平です!これからは俺が来たから!もう安心だから!みんな頑張ろうな!」
大平は背負った小包を、地面で拡げた。
「これ、勤めてた僻地から届いた食糧。みんなで食べてくれ!」
「(オーク一同)グオオオオオオオ!」
「なにやっ?うわあっ!」
大平の姿がオークらの間に吸いこまれ、消えては隠れた。
「うわああ!踏むな踏むな!感謝の念はないのか!いてえ!」
ユウは遠くから見ていた。
「うちは、ちょっと違うよ。よそとは・・・」
女医は少し微笑んだが、それもすぐかき消された。
みな、持ち場に戻る。
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