真夜中。事務室では田中と・・・ムンテラを0時に終えたユウが白衣のままテントの中で眠っている。省エネ対策のため、明かりはパソコンのディスプレイのみ。
向かいの松田クリニックは依然として輝いている。
「・・・む!これは!」
田中はマウスを動かし、ちょっと前の時間の音声記録。
<俺ってラッキー!>院長の声。
<乾杯ですね>あの女の声。
<早速、行動開始や!>
<出発は午後?>
<他の病院に知れたらどうすんねん。朝一や!アサイチ!>
何の話をしてるんだ・・・・。
<院長。明日の午前診を休まれては困ります>
<でもやな。こいこいこい>
<あっ。ちょっと。ダメ。ダメだから>
何をしているんだ・・・?
<ええやないけ!ええやないけ!>
<明日。明日だったら・・>
<えっ?ホンマ?>院長は弾んだ調子。
<明日、ひと仕事終わったら、ね・・・>
田中はイライラし始めた。
「院長の奴・・・!」
うらやましいと言ってしまえば、男として負けだった。
<なので、明日はあたしが行きますね>藤堂ナースは会話でリードしてきた。
<そっか?いけるか?>
<現場で直接交渉なら、相手の信用も得られます>
<へへ。じゃ、よろしく頼むで>
<当院のベッド。空けといてください>
<慢性期っぽいのは全部転院や。カラにして待ってるで!>
どうやら・・どこかの病院から、患者を調達してくる話らしい。
院長はしつこく迫る。
<なあなあ、そしたらええんやな。ええんやな?>
<ええ>
<よしゃあ!>
田中はどこか、鬱になった。
コメント