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2009年6月25日 連載
 朝7時。テンションがいったん下がり、うつろとしそうになったその矢先だ。

<救急搬送!来ます!>
 アナウンスだ。

 地下エレベーター付近、トシ坊が物品整理を終わってドクターカー後ろを出る。

「呼び出し順では僕だ。ザッキーはあとを頼む」
「はいよ」
「呼吸器は3台。残りはトレーラーが追いかける。なるべくはそこの病院の呼吸器をそのまま借りればいい」
「ですね」

 トシ坊はダッシュし、地下エレベーター・・でなく、離れていくつか並ぶ小さなエレベーターへ。イスがあり、座る。

 滑走台の上、同型のイスにすでに人が座っている。大平が張り切っている。

「眠らなくてもいけるぜ。たとえ48時間でも。100時間でもな!」
 真横のイス、桜田が上目づかいに見る。恋をしている目だ。オークナースらは女だけに、気づいていた。

「ユウらの時代は、もう古いってことを教えてやるよ!」

 桜田の向こう、トシ坊の椅子がせり上がった。
「人の陰口は、良くないんじゃないんですか?」

「陰じゃないぞ!」
 大平の椅子が前傾した。ピーポー音がこだまする。

<大平先生。転倒に注意してください>田中が警告。

「早く!落とせってんだよ!」
 イスのベルトがいきなり解除され、滑り台に落とされた。
「ととっ!ぬぬぬぬぬ!」

 スキーヤーの格好で、彼はスイーッと走り始めた。

<救急車は3台。通常の救急。いずれも腹痛の集団発生。桜田先生お願いします>

 桜田の汗が落ちると同時、ベルトが外れた。
「たっ!」
 彼女は左足を前に右足を後ろに、ぎこちないポーズで。

 日系人のピートが、大平の座ってた椅子に腰掛け。

「もう1波、くるぜ」

<内容不明の救急搬送。6台が接近中・・・>

「ほらな」
「いかにも」ひょろっとして頼りない眼科医(修業中)が、女医のいた椅子に着席。

<訂正します。訂正。10・・・12台!>

「おいでなすった!」
ピートは読んでいた本を振り払った。
「ユウ!あとは頼んだぞ!」

 大平と桜田が玄関前を走る中、残り3人とも滑走を開始した。

 正面の松田クリニック、玄関横に待機する大型バイク。近未来的なデザインのものが支給された。メンテナンス終了次第、発進予定。

 ユウの乗るドクターカーもエンジンがかけられ、地下から地上へ向かうシャッターがゆっくりオープンしていく。運転手の田中は後部座席を振り返った。

「レディ?」
「ファースト・・・」

 存続をかけた、対決の時が迫っていた・・・。


 

 

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