松田クリニックでは、院長がモニターで観戦中。
「やるな、あいつら・・・!」昼休みをかなり前倒しし、ソファで鑑賞中。
「そうやってまあ頑張ってろ。うちにはな、もうすぐ数十人という患者が運ばれてくるんだ。そうなればノルマは達成だ!」
気分が高揚し、テレビ電話。
「足津さんに、つなげ」
<ご用でしょうか>横向きだ。
「足津さん。こっちだよこっち!」
<今は別件です>
「藤堂ナースは、かなりのやり手ですぜ?あとは時間の問題でしょうが?」
<そうでもありません>
「え?」
<怪しい車両が、どうもあとをつけているようです>
「まさか?」
足津は、やっと松田院長のほうを振り返った。
<あなた、そんなことも知らないんですか?>
バイクにはすでに連絡が入り、藤堂ナースはジグザグ走行を開始した。車線を次々と変更していく。
「田中くん。ほら!気付かれたじゃないか!」ユウはベルトを締め直した。
「では仕方ない!」サイレンを鳴らす。一気に活気づく。
一斉に、前方の列が両側に拡がりだした。それはまた、藤堂ナースらの道を作ることにもなるのだが・・・。
シナジーは事務室で、ある程度のルートをしぼろうとしていた。
「袋小路の多い道に入っていく!でもあ!出てきた!」
定まらない。
田中くんは、路地には入ろうとしない。
「僕はこれでも地元民です!そこらの路地は行き止まり!入っても出る運命です!」
「さすがだな!地元民は!」ユウは複雑だった。
足津はソファから身を乗り出し、右手で携帯を押した。
「株主の、和田様・・・・・画像は見ておられますか?」
<ああ>
ごく普通の家、デッキで銃を組み立てる姿。正確にはエアガン。窓を通しての屋内には、数々の優勝トロフィー。
淡々と広いデッキで組み立て・・・銃身を縦に。禿げた頭に昔の栄光はないようだが、眼力と欲望ははるか向こうを見つめる。
「こちらはいつでも準備オッケー」
カチャン!と試し打ちの構え。照準で、前方の道路を右へ右へと追い詰める。
「サイレンが見えてきた。あれだな・・・」
<報酬はメールの通りで?>
「ああ」
片目を閉じる。彼の人生はいろいろとやりすぎ、もう金への独占欲しか残っていなかった。すべて手にしたはずが、いつの間にかそれ以上を失った。彼は結論を出した。自分の欲望を邪魔する者を排除する。その正義のためなら・・・
「俺は、何でもやる・・・」
バイクがけたたましく吠えてくるのが分かる。やがて左の耳を通り過ぎる。初老の男の能力はピークを持続した。
「カモーン、カモーン・・・」
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