数日後。
ユウはサンダル先生を地でいっていた。
「はぁ~。だるだるだる!」
「もう。うっとうしいなあ」
事務室でシナジーがパソコン中。
「今日も朝から感動した」
「なぜに?」
「あ、この病院まだやってるなって」
「あのね・・・」
「Q太・・それ言うのもだるい」
FAXが届いている。
「シナジー。大学からか?」
「大学での連絡網です。うちも端っこに絡んでます」
大学のトーナメント形式のような連絡網。その端っこに真田病院。まずは野中医局長から連絡があり・・・ユウら数人の間で輪番式のコール制。
「つまり、誰がいつ呼ばれるかは時の運ってことか・・・」
「いや、これ困るんですよ。正直」
「たまになら、いいけどな」
「とんでもない!うちの経営状況を知ってます?」
「知らないよ。お前がオーナー、オーナーとか言ってそればっかだし」
シナジーは1回だけおじぎした。
「すみません。ただ、うちのドクターを取られるくらいなら、コンサルトという形はどうかと提案しようと」
「コンサルト?」
「私が現場の視察に行き、事務側のサポートをするのです」
「なら、俺たちは行かなくていいのか?」
「・・・かもしれません」
どっちでもいいけどな・・・とユウは思った。
近くの田中が、ヘッドフォンを外した。
「大学より入電!」
バイオのパソコンに、人影が見える。
「どれどれ!」
ユウや皆が走って囲む。トシ坊が背伸びして最後尾。
映ってるのは、野中医局長。
「うわ!カッコいい!」思わず女性事務員が叫んだ。
<こっちは見えてますか?>
「ああ」返事したユウに、みな一目置いた。
<ユウか。あれから元気か?>
「でもない」
<そうか。協力、ありがとう>
「シナジー。あの件・・」
シナジーが前面に出た。
「あのですね。うちのスタッフの派遣の話ですが・・」
<品川さん。こんにちは。いつもお世話になります>
やけに慇懃な、ノナキー。
「できれば私をコンサルタントとして派遣の話の方で・・」
<・・・うーん。その件ですか。困ったなあ・・・>
「うちの病院はジリ貧でして。松田クリニックに患者を多数取られまして」
ユウは隅で呟いた。
「でもな。この前の東大阪の患者群は、このクリニックに運ばれなかったって噂だぜ」
「またまた」
「うちの事務員も証言してる。毎日ここから見えるあっちの病室には空床がやけに多い。ナースらの人手も削減されたと聞く」
田中は頷いた。
「たしかに。スタッフの出入りは減った」
<・・・・・・>ノナキーは、内輪の会話の終了を待っている。
「ということは?」トシ坊が投げかけ、みなユウを見た。
「・・・別のところへ移された・・・」
<もう、いいか?>
「あ、はいはい!」シナジーは正座した。
<品川さん。では早速そこを出発してください。救急ラッシュは明日が確率高いとされてます>
「わ、わかりました」
<大学の講座で協力してくれるのは胸部・腹部内科が中心で、学生らが雑用に回ってくれる>
「他の科は?」ユウが聞いた。
<送られてくる患者の病名性格上、関係のない科は口々に、うちは関係ないからと>
「やっぱりな。そこが大学だよなあ」
<今リハーサルを行っていて、全医局員が集結しつつある>
「頑張れよ。地球防衛軍」
<ユウ!>
「なんだ?」
<松田先生に、勝てよ!>
「はあ」
ピュルル、と画面はしめくくった。
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