みなのPHSが、まるで策略的に鳴り続ける。
「その大平先生なんですが・・」シナジーは気まずそうに。
「何?」
「一気に疲れてしまって、うちのビップ個室に入院しました」
「何なんだよ・・・口ほどにもねえなあ」
「ちなみに1日5万円」
「余計だろ」
大平の個室。コンコン!と叩くが応答なし。鍵が・・・かかってる。
「恋路の邪魔か?」ミチル看護部長が背後に。
「部長。開けてくれ。見舞いにきた」
「だから。恋路を邪魔すんな、言うてんねや」
「こいじ?」
「耳、当ててみいや。何か聞こえるやろ?」
「?」
耳を澄ますと・・・
「女の話し声?」
「て、いうことや」
「女装趣味?」
「殺すぞ」
「あいつ。誰か、彼女いるんだね」
「フン!」
ミチルは詰所へ去った。
思えば、病院というのはストレスが溜まりまくった場所だ。恋愛などする場に相応しくないのに、いとも簡単にカポー(カップル)ができてしまう。先輩医師がよく言ってた。多忙なためDNAが危機と感じ、子孫を残そうとあちこちでカポーができてしまう。
「ま、デキ婚でそういう言い訳はなしだな・・・!」
病棟へ。カルテを1冊ずつくまなく確認。代診・非常勤への申し送り事項を太いペンで囲む。
「ここまで。よし!」
カルテを横に飛ばし、ミチルがキャッチ。
「御苦労!」
「フン!」
タタタ、と駆け出し、手すりに飛び乗った。
さきほどまで無愛想なミチルの表情がちょっとだけ・・・寂しそうな下目遣いをしていたような。
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