どこかのアスファルトの上、トレーラー運転手。藤堂隊長が喰いかけのパンを引きちぎった。
「どんどん上がる・・あがれよ!」
グラフがどんどん上昇。
「そうだそうだ。なんてセクシーな曲線なんだ。もっともっと!もうけさせろよ!」
いきなりモニターが切り替わりメールが到着。一瞬で悟った。
「チッ。さては合図だな!」
エンジンをかけ、タイヤがゆっくり回り出す。
「こちら藤堂隊長。待機エリアへと合流する」
助手席のマーブルが、後部のコンテナに入っていく。薄暗い赤ランプに照らされ、2段ベッドの無数の表示を見る。
「シローがうちの仲間に入るとは、心強いね!」と独り言。
機械的に観察し、各ベッドのデータをバーコードのようなもので読み取り。
「すまんな、みんな。もうちょっとしたら、ここ出られるからな・・・」
それがやがて、真珠会病院の事務に届いた。
ヘッドフォンの美女のパソコンが、自動的に起動。
「きました!入電!」
ダダダッ、と4人ほどが詰め寄る。藤堂隊長が画面に映る。
「諸君はちょうどいい時に来た。我々は末端といえど、責任は重大だ。なにせ全患者の個人データをすべて扱っているのだからな!」
事務にドスン、とハッカーらしき若い男性が座った。
5つのディスプレイに、無数の数字。
「さあてと、今日も各地のハイエナどもに稼がせてあげましょうか!」
ハッカーっぽく、彼は両腕を伸ばした。
右手でまず株の自社株の変動。連動する他の株の動向。
左手でその分析。株主そのものの動向。
そして正面に、送信されてくる画像、データ。
カチカチカチ、とピアノのような連奏。
他の事務員が男性ながら見惚れる。
「たのむぞ!俺の貯金も今後の給与も老後だって、すべてお前にかかってんだぜ!」
ピタ、とハッカーは動きを止めた。
「ちょっと何ですの?」
「あっ?いや・・・」
「末端がハエのごとく、邪魔なんですけど」
「・・・・・」
事務がシンとなった。ハッカーは育ちが良さそうだ。
「そうだよ。あなた方の給与が、僕の腕2つにかかっていることをお忘れなく」
またキーを叩き始めた。
「(ここへの赴任として与えられた家に、ポルシェ・・・元を返したら、女でもいただくか)」
彼は、足津と株主、市場を管理するプロだった。若干22歳。ハッカー犯罪歴があり社会復帰もできず、これが最後の<チャンス>だった。
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