遅ればせながら、ノナキーが滑り台をやっと降りた。
「うわっ・・うわわっ!」
身構えながら降りる。最終的には歩きながら砂場へ。
「おととととと!」
シュウ・・!と砂が舞う。真田のスタッフはそこまで煙は立てない。
「何なんだ。これは・・・」
気を取り直し、玄関の前へ。はるか向こう、駐車場がごった返している。転倒している車が何台か。白衣の集団があちこち。黒いトレーラーや救急車が不思議と入ってこない様子。
どうやら、こちらが圧倒的だとわかった。
「そのトレーラーを!トレーラーを帰すな!」
声が遠すぎて聞こえるはずもない。余計、彼は猛威を振るった。
しかしむしろ驚いた学生らは、散開し始めている。
「(白衣ら)うわああああ!」
散るアリのようだ。
「こら学生!轢かれてでも制止しろ!」走ってきたノナキーの背中が、ぐいっと引っ張られた。
「やめなさい!」シナジーが抑えている。
「確かに今のは言いすぎましたが!しかし!」
「しかしもカカシもないでしょう!リーダーならもっと建設的な指導を!」
「トレーラーのコンテナ5・6両なら、この白衣の人数で余裕でさばける!」
「よくごらんなさい!これで統制が取れるんですか!」
ノナキーは、我に帰った。あどけない顔達がノナキーらをみつめる。
「・・・・彼らだって。医師の・・・」
「私も仕方なくやったことです。応急処置です。統制が取れないなら、従来の治療をあちらで継続してもらうほうがマシです」
「い、いざとなれば。いざとなればうち(大学)は、やや、やれる」
「もう、やめなさい。強がりは。言葉になってませんよ」
ノナキーはついにシナジーと目を合わさなかった。1人取り残された。
玄関から、驚いた患者・家族たちが出ていく。警備員も対応に追われている。
崩壊した乗用車が、あちこちで煙を上げている。
「ひどいな・・・なんだこれは・・・」
ノナキーは立ち尽くしていた。
ドカーン!と小さな爆発。爆裂の方角はあちら側だった。
「うわっ!」
遅れて、熱風。
「野中くん!野中くん!」誰かの声。
「は・・・?」放心状態。
「はじゃないよ!」新教授が汗びっしょりで後ろに立っている。近くでボオオ、と燃え盛る炎。
「教授・・・」
「一体どういうことなんだ?何が起こったんだこれは?」
前面の駐車場は、車が7~8台逆さまに転がっている。
「私は、救急の体制を指揮するよう君に頼んだはずだよ?」
「それが。今日だとは」
「君には失望したよ!」
「も、申し訳ありません」
「それにこんな。戦争なんか、頼んだ覚えはないよ?」
「・・・・・」
「そのうちだと思ったのか?今まで何を準備してきた!それに真田のスタッフはどうした?」
「・・・・・」
動揺した学生らが数人やってくる。が、教授は追い返す。
「業務も!教育も通常通りに復旧だ!もどれ!戻りなさい!」
真珠会の事務室。ハッカーがゴミ箱をけった。
「あー!クソー!暴落暴落!大暴落だー!」
近くのコップを鼻に被せる。
「追証発生!繰り返す!追証発生!」
どうも、様子が変。
他の女事務員どもは失禁しかけていた。
「コーコンキチ!コーコンチキ!」
発狂しかけたのか、彼なりのストレス発散方法なのか。ともかく、今のでかなりの大金が彼らの元から消えたのは確かなようだ。
近く、足津が歩いている。
「・・・・・」
「も!申し訳ありません!計算外のことで!トレーラー組の情報収集のせいで!」
「・・・あなたはあくまで業務に徹し、キチガイじみた行為で周囲の士気を弱めないでください」
「は、はい」
猫のようにおとなしくなる。
足津は電話を取りプッシュ。
「さて。真田のスタッフも、そろそろ大学へ向かってもらって・・・」
ある事務所に電話した。
「友に倒れて頂きます」
受話器を耳にくっつけた。
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