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2009年7月6日 連載

足津理事より携帯を受ける、点滴中の<患者>。

「もしもし・・・今、クリニックです」
「それはいいとして。ナースの行動は見ましたか?」
「風邪で点滴してくれといったら、あの院長は診察もろくにせずで。かなり参ってる様子というか」
「ナースの行動は?」
「えっ・・ああ」

私服警官のような男は、ベッドに座った。よく観察する。

「違法行為など、今のところは見受けられませんが・・・・・ああぁ!」

 他のナースがその私服を再び寝かせようとしたが、彼は反動のように跳び上がった。

「うりゃあ!」
「(ナースら)ぎゃああ!何!」

 指差したその前方には、レントゲンスイッチを押したばかりのナースがまだスイッチを持っていた。珍しいことではないが、このクリニックでは伝統でやっていた。

「診療中止!診療中止!」
「えええっ?」ナースはパニクった。
「すべての診療行為を中止せよ!繰り返す!」

すると同時に、背広が何人も箱を持って突撃してきた。待合の患者の間をぬって。

「診療中止!診療中止!」

真珠会病院でも、ハッカーがケラケラとウケていた。

「診療チューシ!診療チューシ!ケエッケケ!」

 クリニック内。1人の背広が事務室の電源を落とし、また1人がテレビを消す。また1人・・・

 次々と病院の機能が<停止>していく。

「な、何をするんだああ!」
松田院長が診察室から泣きかけで飛び出した。

「けけ!警察呼べっ!警察!」

 点滴中の患者は強制的に点滴中止。高齢であろうが、無差別にさっさと起こされた。

「きさま~!患者のふりして点滴希望とは!」松田は私服の襟をつかんだ。
「ここはもう、病院ではない!」
「何さまのつもりだ!」

私服は名刺を出した。

「私は医療対策課!ここの実情を調べにきた!」
「ぬぅう?なにぃ」
「なんだこれは!どういうことだ!このクリニックには目をつけてきたが・・・」

足津の声一つでやってきたことなど、言うはずもない。

周囲、泣きだす病院スタッフ。患者らは次々と病院を追い出されていく。

「わ、悪いことはしてねぇ」院長は戸惑った。
「本来、レントゲン技師と医師にしか許されてないエックス線撮影を、ナースにさせた!これは重大問題だ!」

「どど、どうなるんだ?その場合?」
サ―ッと血の気が引き、尿が同心円状に拡がった。

 私服は、額縁を持ち上げた。博士号取得の賞状だ。
「こうなるんだよ!」

 バリーン!と振り下ろされた。

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