真田病院では、会議室でケーキなどがふるまわれていた。患者側からのサービスだ。
大学への要請援助にも応えることにもなり、立場的に悪い気もしなかった。
ユウは食べ終わり、外を見た。
「やっと、まともな救急が来るようになったな!」
「何かの前触れかも・・」トシ坊は淡々と喋る。
「いけね。もう帰らんと!」
「大学へはいつ?」ピートが聞く。
「そのうちだ。大学はシナジーが監視してくれてる。ノナキーの補佐役。やっぱりあいつは孔明だよ!」
すると、大平がゆっくり歩いてきた。
「・・・・・」
「大平。顔色悪いぞ。だから復帰はもっと様子・・」
「す。座らせてくれ」
ドカッと椅子に。
「・・・・・」大平は、ユウに耳打ち。
「なんだって?松田先生が・・・」
「ちょっと俺、寝てくる」
「そうか・・・」
不思議と、ショックはあまりなかった。自分はそんなものなのかと驚いた。
「(俺の中の、何かが麻痺してきている・・・!)」
ピートは大平の身体所見を取り出した。
「脈は速いが、ま、いけるだろ!」
「触るな。すぐに回復する」腰に抱えたジュースを飲む。
「また低血糖なんだろ。補給を忘れるなよ!・・って、余計なお世話か」
桜田女医が、うつむいて車椅子を押してきた。
「・・・・・」
大平は無言で乗る。
「・・・・・」
大平は取っ手の彼女の手のひらを握った。
「ここに来て。つらいことだらけだな」
「うん・・・」
キュルキュル、ときしみながら車いすが遠ざかる。
そこへ田中事務員が飛び込んできた。
「松田クリニックが、とうとう閉院したぞー!」
「(一同)おおおおおおおっ!」
ユウは、まだ松田院長のことが実感できない。
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