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2009年7月6日 連載

 真田病院では、会議室でケーキなどがふるまわれていた。患者側からのサービスだ。
 大学への要請援助にも応えることにもなり、立場的に悪い気もしなかった。

 ユウは食べ終わり、外を見た。
「やっと、まともな救急が来るようになったな!」
「何かの前触れかも・・」トシ坊は淡々と喋る。
「いけね。もう帰らんと!」
「大学へはいつ?」ピートが聞く。
「そのうちだ。大学はシナジーが監視してくれてる。ノナキーの補佐役。やっぱりあいつは孔明だよ!」

すると、大平がゆっくり歩いてきた。

「・・・・・」
「大平。顔色悪いぞ。だから復帰はもっと様子・・」
「す。座らせてくれ」

ドカッと椅子に。
「・・・・・」大平は、ユウに耳打ち。
「なんだって?松田先生が・・・」
「ちょっと俺、寝てくる」
「そうか・・・」

不思議と、ショックはあまりなかった。自分はそんなものなのかと驚いた。

「(俺の中の、何かが麻痺してきている・・・!)」

ピートは大平の身体所見を取り出した。

「脈は速いが、ま、いけるだろ!」
「触るな。すぐに回復する」腰に抱えたジュースを飲む。
「また低血糖なんだろ。補給を忘れるなよ!・・って、余計なお世話か」

桜田女医が、うつむいて車椅子を押してきた。
「・・・・・」
大平は無言で乗る。

「・・・・・」
大平は取っ手の彼女の手のひらを握った。
「ここに来て。つらいことだらけだな」
「うん・・・」

キュルキュル、ときしみながら車いすが遠ざかる。

そこへ田中事務員が飛び込んできた。

「松田クリニックが、とうとう閉院したぞー!」
「(一同)おおおおおおおっ!」

ユウは、まだ松田院長のことが実感できない。

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