真珠会。
シローは医局に通された。近代的なミニ図書館のよう。すると・・
「ああっ!きさまは!」
「あら」藤堂の娘だ。ナース姿で各医師らから指示受け中。
「いや、その。すみません。見事な作戦でしたね」
「シローこそ。おめでと」
「最初から、ここに来る予定だったんですね」
「あなたもでしょ?」
「僕はぁ、僕は、違います・・・」
マーブルはシローの横に回った。
「シローは心変わりしたのさ。もうついていけないってな」
「・・・・」シローは否定せず。
マーブルは藤堂ナースから距離を一定に置いた。
「こいつはいやな女だがな、彼女はお前を見込んでくれたんだ。こちらには、逐一報告があった」
「試したっていうんですか・・・」
「だからさ。お前はここにいる」
周囲、張りつめた雰囲気が支配する。ただ、ふつうの病院のふつうの医局であるという印象は変わらない。
「ではシロー。俺は事務に行くからな。あとでトレーラーの点検だ」
「点検?」
「さっそくの<往診業務>だ」
「往診にトレーラー・・・」
しまったと思った。どういうことかぐらいは分かる。
横に、彼女が腰かけた。
「君の本当の目的は、何なんだ?」シローが問う。
「へー?何だと思う?」
「救急隊長の父親と、同じ道を?」
「あたしはナースだから。できっこない。ていうか、救命はやる気もない。ナースらしくあんたらの指示を受けて・・リスクをヘッジするだけ」
「あなたも金のため?」
「そりゃ金は要るわ。あんたもそうでしょ?」
「・・・・・」
彼女は本音を言おうとしない。言うはずがない。
足津は1人、部屋で株の変動を見ていた。のではなく、どこかと通信していた。
「我々が大学を乗っ取った場合、私のパソコンからメールが一斉に放出されます」
<その乗っ取りは・・・今から実行に移すのかね?>
「例によって契約を即時実行なら、こちらも前もって出資しておく」
相手はどこかの取引先。だが誰かが割り込んできた。
<真田病院の医師らが、防御するという噂もあるが・・・>
「それは大丈夫です。彼らは孤立するでしょう」
<その具体的な計画は・・・>
「企業秘密です」
足津はヘッドフォンをかけ直し、話を変える。
「そちら方に病院を転売する話は後として、転売前の整理について検討しておきたいと思います」
<うむ>
「学長に大学の買い取りを認めさせる前に、病院業務のある程度の切り捨て、スタッフの契約を済ませます」
<疲れてる間にさせるわけか>
「はい。その契約は1年は有効。その後そちらでの転売先での条件に切り替わります」
<それが、どれだけ過酷なものかは・・・>
「それを事前に知らされたら、誰も残らないでしょう」
悪魔の契約をさせられた場合のシナリオはひどいものだった。あるドクターバンクに登録され、常にいろんな契約をさせられる。
それは書類上のもので、つまりその医師を名義にして次々と巨額の取引がなされる。当然、借金は度重なり負債が増える。
その間医師は通常の業務を続けるが、最終的な責任を知るのはかなり後の話である。
現状でも、似たようなものはたくさんあるが。
<とにかく、私はそちら関連の株をかなり買い占めてる。暴落の内容に事を進めろ!>
「ごもっとも」
藤堂隊長が入ってきた。
「お呼びでしょうか!」
「あと2時間で、出撃態勢を整えてください」
「2時間!・・わかりました」
「噂では、娘さんが計画の実行を急いでいると?」
「は?彼女にそ、そんなつもりは・・・」
「今回の任務で、彼女は降ろしますので」
「うっ・・・」
鷲津は一瞬、睨みつけた。
「勘違いしないでください。当局が関知しない、ということです」
つまり、こちらは命令せずとも何をしてもよい、ということだ。
「トレーラーはコンテナ8両。患者数64人。あと重傷者を救急車36台」
「ざっと100名・・・」
「お願いします」
「今回も、場合によっては引き返しを・・」
「もう、あんなことはやめてください。株主からの信用を失います」
「ははっ!」
「娘さんに何の私情があるのか存じませんが、契約に私情は禁物です」
藤堂は少し悔しそうだが、すぐに立ち直った。
「夕方のお祈りを済ましてから、出撃としたいのですが」
「・・・・いいでしょう」
「はっ!」
会場では、すでに信者が何千と集まっていた。
シローは医局に通された。近代的なミニ図書館のよう。すると・・
「ああっ!きさまは!」
「あら」藤堂の娘だ。ナース姿で各医師らから指示受け中。
「いや、その。すみません。見事な作戦でしたね」
「シローこそ。おめでと」
「最初から、ここに来る予定だったんですね」
「あなたもでしょ?」
「僕はぁ、僕は、違います・・・」
マーブルはシローの横に回った。
「シローは心変わりしたのさ。もうついていけないってな」
「・・・・」シローは否定せず。
マーブルは藤堂ナースから距離を一定に置いた。
「こいつはいやな女だがな、彼女はお前を見込んでくれたんだ。こちらには、逐一報告があった」
「試したっていうんですか・・・」
「だからさ。お前はここにいる」
周囲、張りつめた雰囲気が支配する。ただ、ふつうの病院のふつうの医局であるという印象は変わらない。
「ではシロー。俺は事務に行くからな。あとでトレーラーの点検だ」
「点検?」
「さっそくの<往診業務>だ」
「往診にトレーラー・・・」
しまったと思った。どういうことかぐらいは分かる。
横に、彼女が腰かけた。
「君の本当の目的は、何なんだ?」シローが問う。
「へー?何だと思う?」
「救急隊長の父親と、同じ道を?」
「あたしはナースだから。できっこない。ていうか、救命はやる気もない。ナースらしくあんたらの指示を受けて・・リスクをヘッジするだけ」
「あなたも金のため?」
「そりゃ金は要るわ。あんたもそうでしょ?」
「・・・・・」
彼女は本音を言おうとしない。言うはずがない。
足津は1人、部屋で株の変動を見ていた。のではなく、どこかと通信していた。
「我々が大学を乗っ取った場合、私のパソコンからメールが一斉に放出されます」
<その乗っ取りは・・・今から実行に移すのかね?>
「例によって契約を即時実行なら、こちらも前もって出資しておく」
相手はどこかの取引先。だが誰かが割り込んできた。
<真田病院の医師らが、防御するという噂もあるが・・・>
「それは大丈夫です。彼らは孤立するでしょう」
<その具体的な計画は・・・>
「企業秘密です」
足津はヘッドフォンをかけ直し、話を変える。
「そちら方に病院を転売する話は後として、転売前の整理について検討しておきたいと思います」
<うむ>
「学長に大学の買い取りを認めさせる前に、病院業務のある程度の切り捨て、スタッフの契約を済ませます」
<疲れてる間にさせるわけか>
「はい。その契約は1年は有効。その後そちらでの転売先での条件に切り替わります」
<それが、どれだけ過酷なものかは・・・>
「それを事前に知らされたら、誰も残らないでしょう」
悪魔の契約をさせられた場合のシナリオはひどいものだった。あるドクターバンクに登録され、常にいろんな契約をさせられる。
それは書類上のもので、つまりその医師を名義にして次々と巨額の取引がなされる。当然、借金は度重なり負債が増える。
その間医師は通常の業務を続けるが、最終的な責任を知るのはかなり後の話である。
現状でも、似たようなものはたくさんあるが。
<とにかく、私はそちら関連の株をかなり買い占めてる。暴落の内容に事を進めろ!>
「ごもっとも」
藤堂隊長が入ってきた。
「お呼びでしょうか!」
「あと2時間で、出撃態勢を整えてください」
「2時間!・・わかりました」
「噂では、娘さんが計画の実行を急いでいると?」
「は?彼女にそ、そんなつもりは・・・」
「今回の任務で、彼女は降ろしますので」
「うっ・・・」
鷲津は一瞬、睨みつけた。
「勘違いしないでください。当局が関知しない、ということです」
つまり、こちらは命令せずとも何をしてもよい、ということだ。
「トレーラーはコンテナ8両。患者数64人。あと重傷者を救急車36台」
「ざっと100名・・・」
「お願いします」
「今回も、場合によっては引き返しを・・」
「もう、あんなことはやめてください。株主からの信用を失います」
「ははっ!」
「娘さんに何の私情があるのか存じませんが、契約に私情は禁物です」
藤堂は少し悔しそうだが、すぐに立ち直った。
「夕方のお祈りを済ましてから、出撃としたいのですが」
「・・・・いいでしょう」
「はっ!」
会場では、すでに信者が何千と集まっていた。
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