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2009年7月8日 連載
早朝。

 真田病院も、いよいよ出発の準備にとりかかる。事務所の外は真っ暗。だが室内ではライトがさんさんと輝く。カアア・・とあちこちでアクビ。

ユウは背中のチューブを何度も抜く練習。
「しゃ!しゃ!しゅ!しゅ!」

カチャン、と右腰にかけてある喉頭鏡。
左手でライトをバシュンバシュン!と点灯。

「ダダッシュダダッシュダダッシュアー!アー!」
「(一同)うるさい!」
「ごみん・・・」

 トシ坊は胸からパソコンを開け、ノートスタイルで大学の構造図など。薬剤在庫の状況。人員の管理表。
「自分は、ここで待機します」

大平はジュースを片手に、もう一方で救急マニュアルを速読。
「休養は十分に、取らせてもらったぞ!」
「本当に?」

女医が現れたとたん、みな方々へ散らばった。

さらにピート、ザッキーがやってきた。差し入れを持ってきているが、誰も目もくれない。

ピートはDCなど救急道具を確認。
「なくすなよ・・・!ザッキー!」
「ああ。ピートさんも待機か」
「オーヒラと、その彼女はどーすんだ?」

桜田女医が、ドンと構えた。
「いきます!2人で動きますので」
「おいおい・・」
「そのほうが、効率的です。大学だって2人態勢だし」
「そりゃ、研修医はフォロー付きが当然だろ。うちは個人プレーが売りだ」

「違うぞ。ピート」ユウが靴ひもを縛りながら呟いた。
「そっか?」
「ていうか。時々違うぞ。お前は」
「日本人はそう決めつけるよな。だが俺は個人個人としての考えが」
「いや。違うと思われたら、違うかもしれないってことだ」
「なに?」
「そう思った経験が、最近なくはないか?」
「俺?それともアメリカ国民に言ってる?」
「だからお前の国は、どんどん医療企業が肥え太って・・・デメリットをかき消すほどのメリットを称賛する」

 田中は、中央に立っている。
「ほらほら、そこで国際紛争起こさない!」

 ピートはうつむいていた。

「ユウ。お前はここの業務を捨ててまで、よその関係ないとこを援助に行く」
「それも違うってピート。大学には人材派遣という借りがある」
「日本人は、そんなお人よしだから・・」
「今でも、騙されてんだろな。きっと」

 みな、大荷物を背負った。

「よし!行くぞ!」

 ドクターカーが3台、地下から地上へ飛び出した。ユウの乗る赤い(新装)ドクターカー1台が先陣をきった。田中事務員が運転。

 トシ坊とピートが、ベランダから見送った。小さく頼りない手振り。

 ユウは、いろいろ考えた。しかし、考えるほど鬱になる。もう何もかも早く終わらせてしまいたい。
「奴らの中には兵隊や鉄砲玉がいるとの情報がある。電気女が来るなら、打ちのめしてやろう!」
「ちょっと黙っててください」運転手の田中。
「ごみん・・」
 
田中は、ある目標を見つけた。

「高速に乗ります!」

事務員のアクセルで、ズドンと消えた。



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