「あれが足津・・・!」周囲のドクターらがひるむ。学生らが意味もなくメモする。
ノナキーも凝視した。
「・・・・・・!」
足津は、ゆっくりシナジーに歩み寄った。
「手紙は、もう読まれましたか?」
「真田病院、事務長の品川。初めまして。手紙ははい、さきほど拝見いたしました」
「そちらのアドレスも存じないようなので」
彼らは名刺交換をした。
足津はチラッと見渡し、本題に入った。
「今日は、そちらを潰すために参上したわけではありません。そもそも前回のケースを指揮したのは私ではなく、別のスタッフです。むろん処分はしましたが」
「(苦しい言い訳を・・・!)」
「株主の反対意見が過半数を上回り、私もこれ以上の経営継続は困難と判断し、真珠会病院をファンドから切り離す決意としました」
「株主?」
「しかし、去るからと言って濁してからではあまりにも武士の道理に反します。なのでこの大学の地において、早々と引き継ぎなどお願いいたしたく」
「それは・・・真珠会の経営をこちらに?」
「ま、そのことも含めてです」
シナジーは胸が躍った。自分なら、あそこの経営をうまいこと持って行ける。そんな夢があっただけに。だが、話が唐突すぎる。
「唐突なのも無理がありません」
「いっ?」心を読まれた。
「これは、株主らの決定なのです」
学祭実行委員が歩み寄った。
「こ、ここでは何ですから!体育館のほうで!」
そこはちょうど、大学祭の講演ステージとして用意してあり椅子が山ほどある。
藤堂の娘がぺこっと頭を下げた。
「本当に、真田の方々には迷惑をおかけして・・・」涙まで見せる。
「あなたは何人かを傷害していますので、弁護士を通じ手続きを取らせてもらいます!」
シナジーは怒りにふるえた。
「反省しております・・・!」彼女はしおらしく、うなだれた。
「ま、いいけど・・・!」シナジーはついつい、許してしまう。
「罪は償います」
「あなたはまだまだ、将来があるというのに。まだ女性の寿命の4分の1くらいでしょう?」
藤堂の親父はふんぞりかえっていた。
「ふん、まあそういうことだ。これまで・・すまんな!」
手を差し伸べたが、シナジーは応じない。
「うちの医局員が追い詰められたのは、あなたが原因じゃないんですか?」
「さあ・・知らん。何のことか、覚えがない」
「・・・・・」
「それより。テレビでも見たけど。あなたら仲間は、すぐに飛び込まなかったんですかいな?」
ノナキーは、こらえた。違う話題を必死で探す。
「すみませんが、当院とそちらの統合の際の採用の際はあくまでも・・・」
「あーいーよいーよ。わしらは出ていくから」
大平が走ってきた。
「シナジーさん!彼らを簡単に許していいのかい?ユウらが怒るよ!それにおい!」
ノナキーが、後ろで無言のまま。
「野中?さんか?医局員がひどい目にあわされたんだぞ?」
「で、でも・・証拠が」
「明らかだろ!」
大平は吠えたが、周囲のテンションは上がらない。
足津がチラッと一瞥した。
「ユウ先生とやらは?まだ到着はされていない?」
「もうじききます」シナジーは馬鹿正直に答えた。
大平は怒った表情で、トレーラー先頭車両を足で何度も蹴った。足音が近づいてくる。
「ユウ!じゃなかった大平さん!名を馳せた人のすることではないですよ!」
事情を聞きつけたノナキー医局長が助手を数十人従え、やってきた。助手らが一斉に大平をにらんだ。
ノナキーは周囲を気にし、拡声器を持った。
<し、至急、全員を体育館へと集めろ!>
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