藤堂ナースは身が危険と思ったのか、足早に一足早く体育館へと駆けて行った。それとも集会の準備か。
藤堂隊長は、隊員服を脱いだ。
「あ~。やっとこの仕事から解放される!」汗が噴き出す。
「どうすんです?これからは」シナジーが見上げた。
みんな、体育館へと歩いていく。
「年金で、細々とやるよ・・・貯金はあるしな」
「退職金も、たんまりもらうわけですか。あれだけ大勢の患者を苦しめておいて」
「だから。それもわしっていうんか?言い方に気をつけんか・・・仮にそうだとしてもやな。わしらはあくまで上方の指示に従ったまで。搬送の行為に前も悪もないわけや。警察に聞いてみい警察に」
「上の指示?そうかな」
「お前らだってどうだ。ブラックリストの患者だの、病院が満床だのと言い張り診察もせず・・・苦しんでる患者をないがしろにしているのはお前らだろうが。こっちもさんざん、ひどい目に遭わされてきたんや」
痛いところを突かれた。
体育館には数百人座れるほどの椅子が用意してある。医者、学生らが導かれ、どどど・・と座っていく。前方の大きな時計はいつの間にか8時半。本日は業務を縮小しているために、出席率が高い。
緊張から解かれたせいか、喋り声がだんだん大きくなってくる。ステージ、足津が端から登場・・するが拍手は誰もせず。端でパソコンを操作する者。照明を調節する者。
鷲津の背後に大画面が投影。
「さきほどまでの短時間で、私が編み出したプランです」
「(一同)おおおおおお!」
「真珠会病院の経営は今後、解体。解体後、経営を譲渡しつつ、医師スタッフは大学病院のほうへ回していきます」
<真珠会>から→が<大学>へ向けて多数、示される。
マスクをして表情を隠した藤堂の娘が、ナースらとともに1列ずつコップを配る。
大平、シナジーにも1つ手渡された。
「この体育館。空調が全然、きかんな?」大平が汗をぬぐった。女医の桜田がおとなしく座る。
「よし。よし!よっし!」シナジーが足をジタバタしている。
「うれしそうだな。事務長さんよ」
「さっき聞いたんですよ。経営権は僕らの側に!どうぞ」回ってきたコップを大平に。
「いや。俺は・・あるから」腰のいつものコップを見せる。
「あ、そうでしたね。持病が」
すると周囲で、「じ?」「痔?」など噂が流れ始めた。
学生総代がマイクなしに、大声で叫ぶ。
「いやあ、この眺め壮観!うちの大学スタッフ!ナースは皆、美人揃い。みなさん、用意はいいですかー!ジュースは回りましたかー?用意は!」
どうやら乾杯の音頭のようだ。
「(総勢1000人余)カンパーイ!」
(拍手)着席。
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