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2009年7月9日 連載
無線連絡が入る。
「テント4番にDC!ディーシー!」
「わかった!」

ノナキーは両パッドを右手に持ち上げた。充電音が聞こえる。左手で本体を運ぶ。
「充電、いけてんだろな!」

「4番・・・!4番・・・!それ!そこいったぞ!」
またしてもベッドが通り過ぎる。誰からがキャッチ。

「トレーラーのあいつら、殺人未遂で逮捕だ!」

背の高いテントの中、ノナキーがパッドを持ってやってくる。ムシッとした暑苦しい中。清潔操作の名目とはいえ・・・。

「200でいくぞ!」
「(一同)はい!」
「どかないか!」

ズドン!と浮き上がる。
ポケットの無線に連絡が入る。
<5番!セルシン!処置車!ちゃんと吸ってそろえておけ!>
<2番!マッサージの交代!人が足りません!>

ノナキーは聖徳太子のつもりで記憶、眼はモニターで確認。
「・・・いけるな!」

テントを飛び出し、ウエストポーチから取り出す注射器・バイアル。
またベッドが走ってくる。

尻もちをつき、脚でせき止め。
「てっ!折れたよ!」わけではない。
注射液、吸い出し完了。反動で反対の手に2度刺し。

「たったっ。しっかりしろ!俺!」
ノナキーは唾を飛ばしまくった。また視線が切り替わる。

「ベッドきたぞ!何をしてるか!学生!」
起き上がり、5番テントへ。学生ら、新規患者を他のテントへ。

テントの後方、放置されそうなベッドがある。人だかりはあるが学生ららしく、茫然としている。教科書を広げながら、まるで実験台のように・・・。

消化器グループの長が来る。

「おいおいおい!この患者は!」
「えっ。いや・・・」学生の1人が人ごみに紛れて消える。
「どんな病名なんだ!」
「・・・・・・」
「僕は分からん!だって現場見てないから!紹介状は?」

あるはずもない。

消化器長はテントの間を他人事のように歩いた。

「野中!野中医局長!」
「はい!なんです!」
テントの中から声。

「どういうことだ!話が違うじゃないか!和平交渉では?」
「放送があって!話は白紙だと!」
「自分はバイトから呼び戻されてわけがわからん。君ら、何をしでかしたんだ?」
「ちょっと待ってください!」

ノナキーが黒いテントに入る。

ズバン!という音がして数秒後、ノナキーがまた出てきた。

「はぁ!先生!消化器グループは何やってんですか!」
「何やってるって君・・・!言葉に気をつけんか!消化器グループはみな解散して、研修日のバイトに出かけて行ったよ!」

「呼び戻してください!人手が全く足りない!」
「わわ、私も通常の業務があるしな・・・きゅ、救急はしばらくやっとらん。ミスでも犯したらそれこそ・・」

ぐいっ、と胸をつかまれた。

「やるんだよ・・・!」
つかんだのは、車いすから背伸びした島の腕だった。


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