シナジーは、テントを背に携帯をひたすら連絡。
「ユウキ先生。まだつながらないな・・・」
野次馬が増えてきた。外来患者やその家族・・・。医療スタッフも多いと思われる。
「あーもしもし?胸部内科の教授さん?」
<そうだが>
「品川です。現場がかなり混乱していて」
<・・話がよく見えないんだが?>
「お聞きになってない?かもな・・・」
<いったいどんな用件で?>
「まずこれをお聞きください」
携帯を現場に向ける。
「・・・ということです。恐れていたことが起きてます」
<なに?なに?>
「患者さんが多数、何の断りもなく搬送されてます」
<契約したばかりだろ?>
「契約?どこでそんな契約が?」
<うん。まあ、それは私は知らないが>
「先生。現場の方へ今すぐ」
<私に命令するのか?>
ガラガラ、と処置車が通っていく。ベッドが1台目、やっと病棟へ向かって動き出す。
「指揮が統制できてません。なるべく上層・・」
<指揮の責任は、野中くんが引き受けている!>
「その野中先生も、人手不足で現場に追われてるんです!」
<・・・君とは話ができんな>
「来てくださいよ!待ってます!でないと週刊誌に売りますガチャ」
シナジーは何度も遠方の国道を見るが、救援のサイレン・・ユウらの姿は見えない。
1番テントはかなりの重症のようで、ポータブルの内視鏡が運ばれた。
「ヘモグロビンが5?輸血がいるな・・・」消化器の先生がデータ参照。
「輸血。とってきます!」学生が興奮する。
「輸血部はここから遠い」
「確かトロッコが・・いや、やっぱり自転車で行きます!」
「連絡はしておく!頼む!」
学生は自転車を取りに走った。
その頃、コンテナでは依然として冷酷な作業が続いていた。
マーブルは震える携帯をつかんだ。
「はいマーブル。足津さん!」
<状況はどうですか?>
「3割はベッド出ました。あちらはかなり息切れしてて、もうすぐ落伍者も出そうです」
<時間の問題と見ましたか?>
「ええ。でも学生らが何人か活躍してまして」
<学生の動きは想定外ですね。封じます。今までの作業を継続してください>
「はい」
マーブルは電話を切った。
「だとよ。シロー!」
最後尾には遠すぎて、聞こえてない。
コメント