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2009年7月16日 連載
大平は近くの学生に頼んだ。



「倒れたこの医者を、新玄関へ連れて行け!熱中症だ!」

「し、しかしあそこは危険だって・・・」

「それはもう安全だ。あそこに脅威はもうない」



確かに、本当の話だった。シナジーが走ってきた。



「ああっ!ザッキー先生が倒れてる!」

「熱中症だよ」

「せ!先生もそこから降りて手伝ってください!」



大平は無視。

「いけるだろ・・・桜田は?」

「状態が悪く、ICUです」

「ICU・・・・・」



彼は一瞬だが、動揺した。

「シナジー。新玄関はもう大丈夫だと、みんなに伝えてやれ」

「先生。どうして分か・・・」

「・・・・・・・」



冷酷な視線に、妙な説得力があった。シナジーも悟った。

「分かりました・・・」

拡声器を取り出す。

<みんな、新玄関・・・日陰を目指しましょう!>



勢いとはいかず、みな1人1台体制でベッドを運び始めた。アンビューなどを抱えた学生らが、周囲を蠅のように飛び回る。



間から、大きな声が突然。

「アレストだ!DC!DC!」

マッサージ開始。周囲の学生らがダッシュ。



ノナキーは手元のボタンを押して、処置車で向かった。物品はほとんどない。

「DCはないのか!」

電子カルテ板、このベッドの患者は難治性不整脈。

「よりにもよって!」



ノナキーに異変が起きた。

「ぐぐっ。ぐぐ・・・」

周囲がたじろいだ。



「ばがあ!」おびただしい吐血だった。アスファルトが鮮血で染まった。

「野中先生!」学生らが介抱に向かった。

「血・・・」

「野中先生!病棟で拮抗剤の注射を受けてください!もう受けてるかと・・・」と学生。

「どうして、お前らを差し置いて・・・」

「研修医らは呼ばれてません。先生ら直接戦力が最優先です!」



近く、シナジーらが駆け足で運ぶザッキーのベッド。ノナキーは横目で見ていた。



「な、なら・・・どうして助手メンバーらの団体が来ないんだ・・・」ノナキーはだんだん気が遠くなっていた。ストレス胃潰瘍による貧血のせいだけではなかった。



また数台、駆け足のベッドが運ばれていく。すると反対方向に、バイクが爆音とともに通った。



「ユウ!ユウが戻ってきた!」



転倒していたベッドバイクで走ってきたユウは、カゴの中の箱のボタンを押した。

「充電完了!」

<針路はそのままで!>

「手、あげろ!いやでも分かった!」



マッサージしている体制で、分かる。

「そこへ突っ込む!」

アクセルをゆるめ、飛び出しにかかる。



バイクがドカドカ!と倒れ、学生がピョンとよけた。

ユウは両手のパッドをベッドの上で押し付けた。



「離れてろ!」



パパン!と小さな火花。



モニターは・・・動き始めた。

「よし!これ持ってろ!」

「はい!」消化器スタッフにわたす。




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