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2009年7月16日 連載
新玄関から、助手の集団が出てきた。

「手伝え!おーい手伝え!」

どうやら、倒れている大人数の救護要請だ。



さらにそこへ、ベッドが1台ずつとめどなく入っていく。

人手は十分足りるようになった。



ユウはバイクのまま、戦闘機のようにグワッと周回した。



「ひどい・・・」



散らばったテントのほか、放置されたガーゼやタオル、それらにすべて血液や注射液などが付着している。物品も針が乱れて散乱しており、数日もの大掃除が必要だ。



中でも、比較的新しいと思われる出血の跡も。ノナキーが吐いたものだ。

「吐血か、喀血か・・・」

自分の鼻をぬぐう。やはり、血液は垂れ流されたまま。止まったと思っても、また流れてくる。



ガリガリ、と踏みつける使い古したチューブ類。微動する段差を気にすることなく、ユウは新玄関へと針路を向けた。シナジーが携帯より。



<ザッキー先生は意識がぼやけてますが、大丈夫とのことです>

「ああ・・・」

<桜田先生は重体で、野中先生もこれから緊急内視鏡を>

「・・・・・」

<大平先生がいないんです・・・>



ユウは振り向いた。

「・・・俺も探してる・・・」



また前を振り向いたところ、前輪に違和感を感じた。

「針でも踏んだか?」

ガクンガクン、と大きく揺れ始め、危険を察する前に飛び降りた。



その際、横でうごめく影で分かった。

「大平!」

バイクはその場で痙攣するように、ウインウインともがき回った。



そこへさらに、雷のような電撃が斜め後方から打ち落とされた。

「うわっぷ!」



ズドーン!とバイクの後方が爆発し、タイヤに刺さっていた針がヒュヒュンとあちら方向に飛んだ。



「大平に、電気女・・・!」

携帯が鳴る。受けるどころではないが癖で受けた。



「シローか!」

<先生。先生・・・>

「トレーラーの中か!」



静まったトレーラーは、依然エンジンも切られたまま。



<先生。狙われています!>

「し・・知ってる!」



周囲、煙のような演出のためよく分からない。パリ、だとかシャリ、だとかいう音が自然的な音なのか人為的なそれなのか。



<先生。警察には詳細に連絡しました。ですので>

「大阪の警察が、頼りになるものか!」



とにかく怖くなり、ダッシュで駆け出した。



シローはトレーラー内で、いきなり頭を殴られた。

「あたっ!」

「誰に!誰に連絡していた?」マーブルが鼻息を吹きかけた。



携帯をもぎとる。

「<1>?誰の短縮だこれはぁ?」

「・・・」

「ま、<1>っていうくらいだからな。お前に一番近い人物といえば・・・」



マーブルは、コンテナ横のハッチを1つ手動で開けた。



「・・・・ユウ!やはり貴様か!」

マーブルはその携帯で、覚えてる番号をかけた。



「大平!ユウがこっちに来る!倒せるんだろうな?」

「くそっ!」シローは体当たりし、携帯が落ちた。

「なにっ!シロー!」



シローは布団を持ったまま窓側へ突っ走り、ハッチのほうへ飛び込んだ。



ユウは走りつつ、ハッチから地面へ落ちてくるシローを目撃した。

「ああっ!あぶねえ!」



間に合うはずもなく、シローはトレーラー横でバウンドした。幸い、布団で弾んだようだ。ユウは開いたハッチを見て、反射的に目指しにかかった。



「元はといえば!マーブルらの野郎が!」



ユウの後ろ、忍者のようにタタッとかがんだ大平がストローを2つ咥えシャシャ!と2連射。カンカン!とコンテナ壁で跳ねかえった。

「チッ!」



ユウは開いたハッチ前に来た。

「シロー!四つん這いになれ!」

「ははい!」



背中を蹴り、両腕がハッチ内に飛び込んだ。内側にのめり込む。

「ぐう!」

「来るなよ!」マーブルの焦った声。



上半身が入りかけたところ、マーブルはリモコンを落としそうに両手でアタフタする。

「潰してやる!」

「!」殺気を感じ、あらかじめ胸ポッケの打腱器を、ブウンと投げた。

「わたっ!」当たらずともマーブルがビビって、リモコンを落とした。




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