ユウはズデン、とトレーラー内部の中心部廊下へ転落した。すぐさま体制を立て直す。壁に誰かが密着したような音。
「囲まれたか・・・!シローは大丈夫か?」
とたん、後ろから抱き締められた。
「うがっ!」
「なあユウ!困るんだよユウ!」マーブルらしくない、オカマっぽい声。
「いてええ!」
ギスギス、と骨が砕けるような衝撃。ヒーローのようにすり抜け技もない。
節操のない生存本能で、ズボンポケットに突っ込んだ手が、白衣ポッケをビリビリ破り始めた。そのまま後方へ、ディバイダーの針が串刺した。
「いでっ!いでっ!」
「マーブル!風上にもおけん!」
「いで!いで!」
マーブルはついにうずくまった。
「ちょっとタイム!タイム!た~・・たた」
何かを拾ったかと思うと、彼の顔に楕円形の日が射し込んだ。
「や!やれ!」
「なに?」
マーブルが投げたリモコンが、ハッチの外で受け止められた。
そこで察知した。ボタンで開いたハッチの向こうから、針束がまとめて3本ほど飛んできた。やみくもに回避、とにかく下に倒れた。
そのハッチが閉じたと思うと、すぐ真横・・いや、下の分が開き、また針が飛び込んだ。ほとんどは壁に当たっただけで、まるでダーツの練習に終わった。
数秒ごと、どこのハッチが開くか予想はつかない。
「バカヤロー!モグラ潰しじゃねえぞ!」
立ち上がり、後部車両から前方へ向かってダッシュした。
「うおおおお!」
わき目もふらずだが、後方に絶えず殺気を感じ続けた。何か、何かが必ず来る。
ダンダンダン!と両側の2段ベッド、交互にぶつかる。もう誰もいない。
ヒュッ・・・・ヒュッという針はともかく、誰かが追いついて来たのは感じた。鬼ごっこでつかまる直前のあきらめを感じた。
「うわっ!」
ピキイイン、と時間が止まった。筒のようなものが刺さる・・のではなく背中にうずもれた。
「ユウ。もう、あきらめろ」大平の声だ。
「やめ、やめ」
「止まれ!」
「ひっ!」
ビビって、その場に座り込んだ。大平のあてがったストローは当たったまま。ものすごい圧力だ。
大平が、まるで子供に話しかけるように同じ目線にきた。
「ユウ・・・俺を、悪者にはすんなよ?」
「てて・・・離せ。どかせ、それ!」
「お前らはきたな・・」
<汚い>と言おうとしたが、前方のオヤジ声が制した。
「帰って、見せしめにするか!」ギリ、ギリ・・・とかみしめるような足音。見上げると・・・
「隊長か・・・藤堂」
「待て待て。そんな、見るな。しょうがないんだ」
「何がだよ・・いてて!」
「わしが・・言おうか?」何やら、気を遣っている。
隊長は、事務的な口調に。
「あのな。さて、何から言うたらいいか。ユウ。わしらも最初は、ちょっと上のランクの生活を望んでただけやった。お前らもそうやろ?」
「てて・・・」
「ところがな。わしらの人事を預かる組織がやな。いろいろ命令してきたねん。最初は大したことないことやったけど・・・」
かつての善人ぶりを思わせるような口調だった。
「それが、いろいろ弱みを握られるようになってやな。マーブルも、ここの大平君も」
「よせ!」今度は大平が制した。
ユウの背中に、より大きな力がかかった。
「大平!きさま!」
「違うんだ。聞け!・・・・・俺が僻地医療で、どれだけ失望したかお前には分かるまい・・・自治体は俺に借金だけ背負わせた」
「・・・・・・・」
「インターネットで知り合った組織、その仲間は好意的なものだった。心を癒してくれた。そんなとき、チャンスが来た」
「てて・・・」
「そうだよ。奴ら金貸しの存在だ。自衛隊上がりの女には、いろいろ教えられたがな!」
藤堂ナースのことか・・・。だんだん分かってきた。
「囲まれたか・・・!シローは大丈夫か?」
とたん、後ろから抱き締められた。
「うがっ!」
「なあユウ!困るんだよユウ!」マーブルらしくない、オカマっぽい声。
「いてええ!」
ギスギス、と骨が砕けるような衝撃。ヒーローのようにすり抜け技もない。
節操のない生存本能で、ズボンポケットに突っ込んだ手が、白衣ポッケをビリビリ破り始めた。そのまま後方へ、ディバイダーの針が串刺した。
「いでっ!いでっ!」
「マーブル!風上にもおけん!」
「いで!いで!」
マーブルはついにうずくまった。
「ちょっとタイム!タイム!た~・・たた」
何かを拾ったかと思うと、彼の顔に楕円形の日が射し込んだ。
「や!やれ!」
「なに?」
マーブルが投げたリモコンが、ハッチの外で受け止められた。
そこで察知した。ボタンで開いたハッチの向こうから、針束がまとめて3本ほど飛んできた。やみくもに回避、とにかく下に倒れた。
そのハッチが閉じたと思うと、すぐ真横・・いや、下の分が開き、また針が飛び込んだ。ほとんどは壁に当たっただけで、まるでダーツの練習に終わった。
数秒ごと、どこのハッチが開くか予想はつかない。
「バカヤロー!モグラ潰しじゃねえぞ!」
立ち上がり、後部車両から前方へ向かってダッシュした。
「うおおおお!」
わき目もふらずだが、後方に絶えず殺気を感じ続けた。何か、何かが必ず来る。
ダンダンダン!と両側の2段ベッド、交互にぶつかる。もう誰もいない。
ヒュッ・・・・ヒュッという針はともかく、誰かが追いついて来たのは感じた。鬼ごっこでつかまる直前のあきらめを感じた。
「うわっ!」
ピキイイン、と時間が止まった。筒のようなものが刺さる・・のではなく背中にうずもれた。
「ユウ。もう、あきらめろ」大平の声だ。
「やめ、やめ」
「止まれ!」
「ひっ!」
ビビって、その場に座り込んだ。大平のあてがったストローは当たったまま。ものすごい圧力だ。
大平が、まるで子供に話しかけるように同じ目線にきた。
「ユウ・・・俺を、悪者にはすんなよ?」
「てて・・・離せ。どかせ、それ!」
「お前らはきたな・・」
<汚い>と言おうとしたが、前方のオヤジ声が制した。
「帰って、見せしめにするか!」ギリ、ギリ・・・とかみしめるような足音。見上げると・・・
「隊長か・・・藤堂」
「待て待て。そんな、見るな。しょうがないんだ」
「何がだよ・・いてて!」
「わしが・・言おうか?」何やら、気を遣っている。
隊長は、事務的な口調に。
「あのな。さて、何から言うたらいいか。ユウ。わしらも最初は、ちょっと上のランクの生活を望んでただけやった。お前らもそうやろ?」
「てて・・・」
「ところがな。わしらの人事を預かる組織がやな。いろいろ命令してきたねん。最初は大したことないことやったけど・・・」
かつての善人ぶりを思わせるような口調だった。
「それが、いろいろ弱みを握られるようになってやな。マーブルも、ここの大平君も」
「よせ!」今度は大平が制した。
ユウの背中に、より大きな力がかかった。
「大平!きさま!」
「違うんだ。聞け!・・・・・俺が僻地医療で、どれだけ失望したかお前には分かるまい・・・自治体は俺に借金だけ背負わせた」
「・・・・・・・」
「インターネットで知り合った組織、その仲間は好意的なものだった。心を癒してくれた。そんなとき、チャンスが来た」
「てて・・・」
「そうだよ。奴ら金貸しの存在だ。自衛隊上がりの女には、いろいろ教えられたがな!」
藤堂ナースのことか・・・。だんだん分かってきた。
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