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2009年7月16日 連載






真珠会では、モニター上での想定外に、かなり盛り上がっていた。ハッカーがパソコン画面をいくつか切り替える。



「ウホ!こりゃ、かなり盛り上がるぞ!」

「結果はまだですか」足津はよそを向いていた。

「足津さん。こいつ、超、おもろいっすよ!あ・・・」



我に返り、押し黙った。



しかし、近くのモニターによれば株は買われ続け根を上げている。

「見守ってますよ、賢い株主の皆様は。これを機会に、一気に盛り上げましょうよ・・・」

と小さくつぶやいた。



足津は、チラと横目で気にはしている。

「・・・・・・・・・・本日の取引は、あと1時間。それまでに結果を。でないと。本部から切り捨てられます」

「だれ・・がです?」ハッカーが振り向いた。



「あなたたち。全部です。契約にもあった通りです」

「(一同)ええっ?」



足津は、自信に満ちて微笑んだ。



「あなたたち。そんな事も知らなかったんですか?」



 いつぞや真田のドクターカーをベランダから急襲した<株主>の家。ゆっくり開けた妻をものともせず、突っ込んで来る警官ら。



「きたでー!きたでー!」



 ベランダでは、半笑いのようにパソコンを見つめる高齢男性。

「・・・・・やれ!それいけ!」

 パソコン上、トロッコが走りだす場面。



「やってまえやってまえ!」

「何してる?」見知らぬ警官。

「あ」ベランダで振り向く<株主>。



警官はパソコンをチラッと盗み見して、数人とともに<株主>の1人の彼を囲んだ。



「あんたな。もう、ああいうことやめなさいな」

「ああいう、こと・・・」

「あんたのせいで、罪のない市民が何人も大ケガしたで。ま、大事には至らんかったけど」

「・・・・・・・」

「大金稼ぐなら、あんた他にも手段があるやろうによ~」



くわっ、と彼の表情が変わった。



「他にだと?他に何がある!」

「動くなや」



銃が3つ、すでに狙っている。



またちょうどその頃、他の<株主>はスーツで職場に戻った。



「外出。戻りました」

「・・・・・」無関心な同志らは、パソコン画面のみ。

「てと」



パソコンを開く。投資した株は、株主らの高揚心でどんどん上がっている。これを機会に日本の医療は弱腰となりスタッフは逃げ出し、身の危険を感じるだろう・・・。



「よっしゃよっしゃ・・・!大株主としての、俺の第2の人生や!」



アホらしくなり、職場を去る決心をした。もともと荷物はロクにない。彼は立ち上がり、貴重品だけをセカンドバッグにしまい始めた。ここで一生働いて得るだけの金が、今日手に入る。つもり。



「じゃ・・・」

「あー待って」上司が通り過ぎようとする。

「あの、辞めますんで」

「は・・・?」



ニヤリと笑い、彼は再び青空のもとに出た。



「たのんだよ~!かかか(大あくび)!足津さん!」

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