真珠会では、モニター上での想定外に、かなり盛り上がっていた。ハッカーがパソコン画面をいくつか切り替える。
「ウホ!こりゃ、かなり盛り上がるぞ!」
「結果はまだですか」足津はよそを向いていた。
「足津さん。こいつ、超、おもろいっすよ!あ・・・」
我に返り、押し黙った。
しかし、近くのモニターによれば株は買われ続け根を上げている。
「見守ってますよ、賢い株主の皆様は。これを機会に、一気に盛り上げましょうよ・・・」
と小さくつぶやいた。
足津は、チラと横目で気にはしている。
「・・・・・・・・・・本日の取引は、あと1時間。それまでに結果を。でないと。本部から切り捨てられます」
「だれ・・がです?」ハッカーが振り向いた。
「あなたたち。全部です。契約にもあった通りです」
「(一同)ええっ?」
足津は、自信に満ちて微笑んだ。
「あなたたち。そんな事も知らなかったんですか?」
いつぞや真田のドクターカーをベランダから急襲した<株主>の家。ゆっくり開けた妻をものともせず、突っ込んで来る警官ら。
「きたでー!きたでー!」
ベランダでは、半笑いのようにパソコンを見つめる高齢男性。
「・・・・・やれ!それいけ!」
パソコン上、トロッコが走りだす場面。
「やってまえやってまえ!」
「何してる?」見知らぬ警官。
「あ」ベランダで振り向く<株主>。
警官はパソコンをチラッと盗み見して、数人とともに<株主>の1人の彼を囲んだ。
「あんたな。もう、ああいうことやめなさいな」
「ああいう、こと・・・」
「あんたのせいで、罪のない市民が何人も大ケガしたで。ま、大事には至らんかったけど」
「・・・・・・・」
「大金稼ぐなら、あんた他にも手段があるやろうによ~」
くわっ、と彼の表情が変わった。
「他にだと?他に何がある!」
「動くなや」
銃が3つ、すでに狙っている。
またちょうどその頃、他の<株主>はスーツで職場に戻った。
「外出。戻りました」
「・・・・・」無関心な同志らは、パソコン画面のみ。
「てと」
パソコンを開く。投資した株は、株主らの高揚心でどんどん上がっている。これを機会に日本の医療は弱腰となりスタッフは逃げ出し、身の危険を感じるだろう・・・。
「よっしゃよっしゃ・・・!大株主としての、俺の第2の人生や!」
アホらしくなり、職場を去る決心をした。もともと荷物はロクにない。彼は立ち上がり、貴重品だけをセカンドバッグにしまい始めた。ここで一生働いて得るだけの金が、今日手に入る。つもり。
「じゃ・・・」
「あー待って」上司が通り過ぎようとする。
「あの、辞めますんで」
「は・・・?」
ニヤリと笑い、彼は再び青空のもとに出た。
「たのんだよ~!かかか(大あくび)!足津さん!」
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