142

2009年7月22日 連載

 砂利のような粉砕物をゆっくり踏みながら・・・出口をさぐる。暗闇ながら、目が慣れてきて明るい方へと自らを導く。景色の変化のある方向に。

「・・・・・あいつら。どっか消えたのか・・・」

 伸ばした腕がやや曲がった。行き止まりのようだが・・・どうやら腕が入る。いや、かなり大きい穴・・・穴だ。斜め上に向かってポッカリ開いた穴。

「解剖からすると、肝臓内の静脈か?」

 何本かあるうちの1本か。両腕を伸ばし、そのまま斜め上めがけて入る。片脚をかけ、もう1本。管の中に入った。

「すべらんように、登らないと・・・!」

 管の壁は厚紙のようなもので、さらに補強がしてある。弾力がないのも、学生らの徹底した設計なのか。斜め45度、徐々に登る。出口の向こうは明らかに明るい。

「・・・・・」

管の外側、ヌッとユウの顔だけが現れた。周囲は、縦に走るより巨大な管の中。これまた管の内部、ポッカリ開いた穴がある。

「心臓への入口か・・・」
「行け」

後ろから突かれたと思ったら、知らない間に藤堂ナースのドラゴ頭だった。額のシワが逆への字複数。思いっきり上目遣いだった。

「あの穴に。入れ」
「わ!」両ポケットのDCパドルをむしり取られた。
「返してもらう!ったく・・・」

彼女は腰に当て、キュイイインと充電音。わずかに緑に光る。ユウは穴を出て飛び降りたかった。

「うう・・・」
「落ちたら死ぬぞ。どれくらいの高さかは、見当がつくだろう?」ナースは意地悪に背中をつかんでいた。

 ユウは仕方なく、小さな踏み段を1段ずつ、心臓へと通じる穴の入口まで近づいた。藤堂ナースは背中を引っ張りつつ、携帯で何かを入力。

「・・・・・」
「あの・・・行ってもいい?」
「待て。あーオヤジ。あたし・・・そっちは?なに、まだ働いてるのがいる?」

 大学病院のスタッフらの話だ。

「フンフン。重症患者に追われること・・・・5名?5名ね。ファイブ。時間の問題?マジかよ」忙しく電話を再入力。「大平!」

<なんだ?もう心臓か?>
「間もなくだ。残存スタッフはヘルプないまま限界に来ているようだ」
<俺の出番だな?>
「あと10分もすれば、くたばる。そのタイミングで」
<じゃ、早いとこ片付けようぞ!>

ユウはギクッとなった。何を片付けようという話なんだ・・・・?

藤堂ナースは携帯にメール入力。

「あとは、株主らに報告を、と・・・!さ、行くぞ!」今度は足で押しだした。
「てっ!」

ユウの顔が心臓入口に乗り上げられた。








コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索