砂利のような粉砕物をゆっくり踏みながら・・・出口をさぐる。暗闇ながら、目が慣れてきて明るい方へと自らを導く。景色の変化のある方向に。
「・・・・・あいつら。どっか消えたのか・・・」
伸ばした腕がやや曲がった。行き止まりのようだが・・・どうやら腕が入る。いや、かなり大きい穴・・・穴だ。斜め上に向かってポッカリ開いた穴。
「解剖からすると、肝臓内の静脈か?」
何本かあるうちの1本か。両腕を伸ばし、そのまま斜め上めがけて入る。片脚をかけ、もう1本。管の中に入った。
「すべらんように、登らないと・・・!」
管の壁は厚紙のようなもので、さらに補強がしてある。弾力がないのも、学生らの徹底した設計なのか。斜め45度、徐々に登る。出口の向こうは明らかに明るい。
「・・・・・」
管の外側、ヌッとユウの顔だけが現れた。周囲は、縦に走るより巨大な管の中。これまた管の内部、ポッカリ開いた穴がある。
「心臓への入口か・・・」
「行け」
後ろから突かれたと思ったら、知らない間に藤堂ナースのドラゴ頭だった。額のシワが逆への字複数。思いっきり上目遣いだった。
「あの穴に。入れ」
「わ!」両ポケットのDCパドルをむしり取られた。
「返してもらう!ったく・・・」
彼女は腰に当て、キュイイインと充電音。わずかに緑に光る。ユウは穴を出て飛び降りたかった。
「うう・・・」
「落ちたら死ぬぞ。どれくらいの高さかは、見当がつくだろう?」ナースは意地悪に背中をつかんでいた。
ユウは仕方なく、小さな踏み段を1段ずつ、心臓へと通じる穴の入口まで近づいた。藤堂ナースは背中を引っ張りつつ、携帯で何かを入力。
「・・・・・」
「あの・・・行ってもいい?」
「待て。あーオヤジ。あたし・・・そっちは?なに、まだ働いてるのがいる?」
大学病院のスタッフらの話だ。
「フンフン。重症患者に追われること・・・・5名?5名ね。ファイブ。時間の問題?マジかよ」忙しく電話を再入力。「大平!」
<なんだ?もう心臓か?>
「間もなくだ。残存スタッフはヘルプないまま限界に来ているようだ」
<俺の出番だな?>
「あと10分もすれば、くたばる。そのタイミングで」
<じゃ、早いとこ片付けようぞ!>
ユウはギクッとなった。何を片付けようという話なんだ・・・・?
藤堂ナースは携帯にメール入力。
「あとは、株主らに報告を、と・・・!さ、行くぞ!」今度は足で押しだした。
「てっ!」
ユウの顔が心臓入口に乗り上げられた。
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