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2009年7月30日 連載

 真珠会病院、事務室。雇われハッカーが頭をかきむしり、4台のパソコンの分割画面を切り替えまくる。
「おいおいおいおいおい!」

 手元には携帯が数台。押しても押しても、つながらないものばかり。
「ちょっとおちょっとお!」
「山吹さん。株主様からの問い合・・」とヒラの女性事務員より子機。
「うるっせえってんだよお!」
「ひいっ!」

 ハッカーの顔は青ざめ、動悸で心臓が飛び出しそうだった。
「どうなってんだあ?藤堂ナースも、長期も、大平もマーブルもみーんな・・・」

 バン!とつく両手。

「どうしてじゃあ!」
「静かにお願いします」と横の足津。

「あっああ・・・どうも」
気を取り直し、また電話。

「藤堂隊長?隊長?バー・・いやいや、何してんの?様子はどうなってんのー?ねえ」

 隊長はトレーラーの運転席にいた。
「・・・・スタッフらは、みな患者持って引き揚げたよ・・・」
<まだ働いてるスタッフがいたのか?>
「ああ。10人はまだいる」

<それでさーその。大平たちに連絡がいっこーにつかねーんだけど?>
「トロッコで走ってった」

「トロッコだぁ?」
ハッカーは目を丸くした。
「真田の医者は、みな倒したんだろな?」
<いや・・・>

隊長は無線を握った。
「あと1人、しぶといのがいる。たぶん娘が処理したと思う」

<隊長!大学の様子を見てこい!やつらの奮闘ぶりをな!>
「・・・・・」
<書類、持って行けと足津さんからの命令だ!>

 隊長は、ダッシュボードのボックスから契約書類を出した。それと、取り付け用カメラ。何を思ってか、必然からか隊員用の服を脱ぐ。白シャツ+ダブダブズボンと化した。工事現場と変わらない。

「・・・・・」

 医師が現場を放棄するとき用に、用意した。スタッフを人質に調印をもらい、これで委託を受ければ・・・実質的な業務がこちらの手に入る。

「すべては、株主のため、か・・・」

 彼はしかし言い聞かせた。この長い人生、残ったものは娘と金しかない。

「気が進まないが、行くとするか・・・」

 エンジンを切り、スタッと地面に降り立った。駐車場は荒涼としていて、気絶からやや起き上がりつつあるスタッフ、また壊れた物品などが散乱していた。

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