見上げると、人体の模型。さきほどいたところだ。後ろ向きなのを見ると、どうやら肛門のほうから出たようだ。
「う・・や、やっぱりオンギャー!オンギャー!」
液体は臭くない。そこまで徹底したリアルではない。
「サラダ油か何かか・・・」
起き上がろうとしたが、激痛で立てない。それどころか、呼吸がかなり浅促性なのに今更気づいた。
「酸素飽和度は・・・」
指で測定、76。
「指が冷たいからかな・・・いやいや。ま、そういうことに」
しかし、息苦しさが加速する。言葉を発すること自体が苦痛になり、独り言をいいつつ倒れた。
「・・・・・」
手探りすると、どうもおかしいと思った通りだ。左の背中にも、針が刺さっている。右に刺さってるのと同じタイプだ。
だが注射器で引こうにも・・届かない。右の針も、引きが悪くなっている。血液で詰まりかけているものと思われる。
「(こ、このまま死ぬのか・・・・空はこんなに青いのに・・・)」
死というものが、こんなに苦しい末に到来するのなら・・・自分らが診てきた人たちはそこで何を考えたろう。そんなことが頭を平気でよぎる。
大学病院、救急室の外に<立ち入り禁止>の大きな張り紙。
「入れない入れない!」
中年の助手ら数名が、通行人を威嚇する。
担架で運ばれていくノナキーを、教授が見下ろした。
「野中くん!ちょっと野中くん!」
「・・・・・」薄眼を開ける。
「これで終わりなんだな?もう来ないんだな?搬送は?」
「・・・・・」なんとか、こっくりと頷いた。
「よし分かった!あとはやっとく!」
新教授は人波をかきわけ、無条件に救急室のドアを開けた。助手らは道を開けていた。
「こりゃあ・・・!」
顔だけ壁にもたれ、両脚を伸ばしきった白衣の・・死体だった。目が半開きになっている。
蘇生に使用した機器の残骸も散らばる。
「なんでそこまで・・・」
名札を確認する。
「わずか3年目の医者が・・・」
敬意からか安心感なのか、新教授は涙を抑えきれなった。はたまた、自分のふがいなさを嘆いてか。
「・・・・・・・」
「真田病院から、援軍の到着予定です!」と助手。
「お、遅すぎると言っておけ!」
タンタンタン!と新教授はれまでにない勢いで、出口へと出て行った。
玄関の外、駐車場ではケガ人の救護、機器の回収が続けられている。真昼間のせいか、あまり悲壮感がない。
「真田の奴ら。真田の奴ら・・・!」
左の遠方、空がややオレンジ色に見える。だがそれは、夕日ではなかった。
「う・・や、やっぱりオンギャー!オンギャー!」
液体は臭くない。そこまで徹底したリアルではない。
「サラダ油か何かか・・・」
起き上がろうとしたが、激痛で立てない。それどころか、呼吸がかなり浅促性なのに今更気づいた。
「酸素飽和度は・・・」
指で測定、76。
「指が冷たいからかな・・・いやいや。ま、そういうことに」
しかし、息苦しさが加速する。言葉を発すること自体が苦痛になり、独り言をいいつつ倒れた。
「・・・・・」
手探りすると、どうもおかしいと思った通りだ。左の背中にも、針が刺さっている。右に刺さってるのと同じタイプだ。
だが注射器で引こうにも・・届かない。右の針も、引きが悪くなっている。血液で詰まりかけているものと思われる。
「(こ、このまま死ぬのか・・・・空はこんなに青いのに・・・)」
死というものが、こんなに苦しい末に到来するのなら・・・自分らが診てきた人たちはそこで何を考えたろう。そんなことが頭を平気でよぎる。
大学病院、救急室の外に<立ち入り禁止>の大きな張り紙。
「入れない入れない!」
中年の助手ら数名が、通行人を威嚇する。
担架で運ばれていくノナキーを、教授が見下ろした。
「野中くん!ちょっと野中くん!」
「・・・・・」薄眼を開ける。
「これで終わりなんだな?もう来ないんだな?搬送は?」
「・・・・・」なんとか、こっくりと頷いた。
「よし分かった!あとはやっとく!」
新教授は人波をかきわけ、無条件に救急室のドアを開けた。助手らは道を開けていた。
「こりゃあ・・・!」
顔だけ壁にもたれ、両脚を伸ばしきった白衣の・・死体だった。目が半開きになっている。
蘇生に使用した機器の残骸も散らばる。
「なんでそこまで・・・」
名札を確認する。
「わずか3年目の医者が・・・」
敬意からか安心感なのか、新教授は涙を抑えきれなった。はたまた、自分のふがいなさを嘆いてか。
「・・・・・・・」
「真田病院から、援軍の到着予定です!」と助手。
「お、遅すぎると言っておけ!」
タンタンタン!と新教授はれまでにない勢いで、出口へと出て行った。
玄関の外、駐車場ではケガ人の救護、機器の回収が続けられている。真昼間のせいか、あまり悲壮感がない。
「真田の奴ら。真田の奴ら・・・!」
左の遠方、空がややオレンジ色に見える。だがそれは、夕日ではなかった。
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