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2009年8月6日 連載
「・・・心筋炎で入院。それは知ってる。これも・・・」
看護記録に移る。処置後にまとめた走り書きだろうが、じっくり読む。
「おい!シロー!シロー!」

返事がない。

「シロー!こっち来て読むんだよ!おいシロー!」

無言。

「チッ・・」
続きを読む。

<酸素飽和度低下、85%。心室性不整脈出現、リドカイン投与・・・・>

目を閉じ、状況を飲み込んでいく。

<酸素投与量マックス(限界)、主治医によるムンテラ>

不思議と、ミタライが慌てているような記載はない。


<ムンテラ内容:非常に危険な状態。蘇生に移る可能性高い。家族に同意と付き添いを希望・・・>

「シロー!」
「あ、現れませんよ僕は!」
「どこ?」
「医療側の記録を読めってことでしょう?」
「裏切る気?」

ズバアア!と閃光が放たれると同時、書庫からおびただしい量の書類が一斉に空中へと散らばった。
バサバサバサ・・・と紙の間に紙が滑り込むように。

シローは、いきなり喉の違和感を悟った。
「うっ・・・?」
「シロー!手伝わないと!アレルゲン、浴びせるわよ!」

散っているのはカルテの切れ端だけじゃない・・・長年ここに蓄積されたのは、シローにとっては大敵の・・・

「ハウスダストか!」

叫んだとき、シローは気道の狭窄感を感じ始めていた。サッとマスクを装着。しかしすでに暴露はかなりされている。
「く、苦しい・・・!」

目を開けられないほどの粉吹雪。シローは窒息感を覚え、あちこち棚の脚をかきむしった。
「ゼェ!ゼェ!」

ユウら、かつての仲間の優しそうな表情が浮かんだ。

<シロー。恥は一時の掻き捨て。また俺たちの仲間になれる>
<家族のことは任せろ。俺たちが何とかする>

「ゼエ・・そうだよね。そうだよね・・・仲間なら、頼っていいんだよね!ゼエ!」
ウエストポーチから、やっと取り出した注射器。

「ゲポオ!」床に吐く。
ボスミンのアンプルを切る。指をかすり、飛び散る鮮血。ものともせず、突っ込む注射針。

「こんな所で、こんな所で・・・」

注射器、反対側の上腕へ。

「死んでたまるかーー!」

ブスッと刺すが、深すぎた。
「ぐあああああ!」

こんな時だけだが、今こそ神よ・・・!

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