153

2009年8月10日 連載

 藤堂ナースすらギョッとさせるような、シローの叫び声。よけた勢いで、DCベルトが腰からドサッ落ち、どこかへバウンドした。

 ・・だがもういい。彼女にはもう、目標とするものはない。

 ヒュウ!と大量の風により、室内から外へ一掃されていくハウスダスト。1つずつ開けられた窓から、大きな西日と大量の風が入って、また出ていった。

 藤堂ナースが、碁盤目の通路のど真ん中に現れた。片手はカルテの束を握っている。
「・・・・・・」

 その真後ろ、無息でシローは睨んでいた。パッドが2つ転がっている。使い方は説明を聞いて知っている。
「(くそ・・・届かない・・・!)」

 目の前、黒いレザーを着た女は棒立ちしたまま、まるで魂を抜かれたかのように突っ立っていた。
「・・・・・・・」
 パラ、パラと行き来するページ。どうやら、何かの核心部分を繰り返しては閲覧しているようだ。

 シローは手を伸ばした。が、パッドには届かない。ゴトッと女の足が浮いたとたん・・いや、それは1歩ずつ歩き始めた。

携帯を取り出し・・

「おやじ?今どこ?」
彼女が振り向き、シローは観念した。

「(やられる!)」

 だが彼女は目もくれず・・・そのまま歩いて行った。
「帰ろうよ。うん。みんな倒した。そっちは?」

シローの喘息発作は、何とかほぼ治まった。頻拍だが仕方ない。

「・・・・・あの女。帰るのか?だいいち、帰れるのか?」

自分も含めて、の話だが。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索