遅れて到着した警察隊の2人は、駐車場で玄関から湧き出す煙を見上げていた。
「なんだ、ありゃあ・・・」
2人の間、水浸しで抱えられている大平には、かつての生き生きとした活気はなかった。
「俺。俺・・これからどうなるんですか」
「いったん、病院で確認してもらってからな」警官の1人がしゃべった。
「確認・・・」
うつむいたまま、玄関へと歩く。もう1人の控えめな警官がさっきからみている。
「なんで・・・こんなことしたの?あんたら。な」
「・・・・なんでって・・・」
「はーん?」
「あんたら、教えてくれよ・・・」
新玄関に近付くと、粉砕された噴水と2両ほど転倒したコンテナがある。近く、白衣を着ているゴリラ医者が、事情聴取を受けている。頭の怪我も、誰も気にしてない。このマーブルもまた・・・焦燥っしきった表情だ。
大平は、どこか心のとっかかりが外れたような気がしていた。むしろこうして捕まって、いわゆる歯止めをかけられたことが。やっと自分の感情にブレーキがかかったような。一区切りついたような。
周囲に医療を裏切られ、金しか信用できなくなりそれに振り回されていた、しかもそれを知ってるのに自らを解放できなかった。そういう人間は、他人の力で制裁を加えられるしかない。
無残に焼け焦がれた車両の残骸を横目で見ながら、彼らは階段を1段1段ずつ登って行った。彼の両手の上はタオルのようなもので見えないが・・・両側の警官から、逮捕者であることは周囲にはバレバレだ。
みな、親族への怒りのように彼を見る。だが白衣を着てもいるので複雑な反応でもある。
奇異な視線にさらされつつ、彼は歩き続けた。
ICUは超満床の状態で、医局員らが大勢詰め寄っていた。ほとんどが、今回の実戦に<参加できなかった>助手クラスらだ。奥のカンファレンス部屋では、今更ながら入院となった患者らの検討会。
ひっそりと個室のベッドには、病衣の若い女性がうっすらと天井を見ている。その両側、6人ほどが取り囲んでいた。
汚れたカッターシャツの品川は何か呟いた。彼女は数秒遅れで首を縦に振ったり、横に振ったり。桜田の表情には色がなかった。
車椅子でぐったり眠っているのは、先ほど退院となったザッキーだった。頭に包帯、あちこちに火傷用のガーゼ。
ユウはひたすら、目を強く閉じていた。何を話していいのか、わからず。一番言いたいのは、<こんなとこに助けに来るんじゃなかった>。でもそれを口にすれば、彼女の命がけの行動が無になる・・・。
個室のドアが開き、ざわめく声とともに警官が2人入ってきた。ズボンがそれなので分かった。清潔服などとっくに足りてなかった。
「真田病院のスタッフの方々は・・・?」
「え、はい」シナジーが、とっさに飛び起きるように反応した。
「確認して、いただけますかー?」
すると、大平がいつもと同じような表情で・・見え隠れする手錠を除いては。みな、溜息をついた。もちろん事情はユウから聞いている。ただ、桜田だけは。彼女にだけは・・・。
みな彼女を見た。彼女は横にわずかに一瞥し、相変わらず無表情のまま。石でも見たような表情だった。
「みんな、すみません・・・」大平は精一杯の言葉を出した。
「(一同)・・・・・・」
「ユウ」
「・・・?」ユウは戦闘のこともそっちのけし、いつも通りの表情で見た。
「どうかしてた、と言ったら変か?」
「さあな。どうなんだ?」
「・・・・」
「彼女に言えよ。何か」
シナジーは、みなを従えて外に出た。自然な成り行きだった。警官はしかし外すわけにはいかない。
個室の外、ユウはシナジーに向かった。
「もう何がどうなったって。事実は分かっても、ピンとこない。また明日から、普通の生活に戻るような気がして」
「・・・・・」
「大平だって、殺したいくらいの気持ちなのにな。それが、なんだ。いざ会ったらこっちはほんの無力で。一体何なんだ。大衆みたいに戦争存在のみを否定して、それで終わりか」
警官2人が大平を伴って、個室を出てきた。桜田は片腕で表情を隠し・・・
どんな会話だったのか、以後も誰も知らない。
それと、ユウも分からなかった。一体だれが自分を助けて、そうつまり自分は誰のおかげで、この世に存続しえたのか・・・。
「なんだ、ありゃあ・・・」
2人の間、水浸しで抱えられている大平には、かつての生き生きとした活気はなかった。
「俺。俺・・これからどうなるんですか」
「いったん、病院で確認してもらってからな」警官の1人がしゃべった。
「確認・・・」
うつむいたまま、玄関へと歩く。もう1人の控えめな警官がさっきからみている。
「なんで・・・こんなことしたの?あんたら。な」
「・・・・なんでって・・・」
「はーん?」
「あんたら、教えてくれよ・・・」
新玄関に近付くと、粉砕された噴水と2両ほど転倒したコンテナがある。近く、白衣を着ているゴリラ医者が、事情聴取を受けている。頭の怪我も、誰も気にしてない。このマーブルもまた・・・焦燥っしきった表情だ。
大平は、どこか心のとっかかりが外れたような気がしていた。むしろこうして捕まって、いわゆる歯止めをかけられたことが。やっと自分の感情にブレーキがかかったような。一区切りついたような。
周囲に医療を裏切られ、金しか信用できなくなりそれに振り回されていた、しかもそれを知ってるのに自らを解放できなかった。そういう人間は、他人の力で制裁を加えられるしかない。
無残に焼け焦がれた車両の残骸を横目で見ながら、彼らは階段を1段1段ずつ登って行った。彼の両手の上はタオルのようなもので見えないが・・・両側の警官から、逮捕者であることは周囲にはバレバレだ。
みな、親族への怒りのように彼を見る。だが白衣を着てもいるので複雑な反応でもある。
奇異な視線にさらされつつ、彼は歩き続けた。
ICUは超満床の状態で、医局員らが大勢詰め寄っていた。ほとんどが、今回の実戦に<参加できなかった>助手クラスらだ。奥のカンファレンス部屋では、今更ながら入院となった患者らの検討会。
ひっそりと個室のベッドには、病衣の若い女性がうっすらと天井を見ている。その両側、6人ほどが取り囲んでいた。
汚れたカッターシャツの品川は何か呟いた。彼女は数秒遅れで首を縦に振ったり、横に振ったり。桜田の表情には色がなかった。
車椅子でぐったり眠っているのは、先ほど退院となったザッキーだった。頭に包帯、あちこちに火傷用のガーゼ。
ユウはひたすら、目を強く閉じていた。何を話していいのか、わからず。一番言いたいのは、<こんなとこに助けに来るんじゃなかった>。でもそれを口にすれば、彼女の命がけの行動が無になる・・・。
個室のドアが開き、ざわめく声とともに警官が2人入ってきた。ズボンがそれなので分かった。清潔服などとっくに足りてなかった。
「真田病院のスタッフの方々は・・・?」
「え、はい」シナジーが、とっさに飛び起きるように反応した。
「確認して、いただけますかー?」
すると、大平がいつもと同じような表情で・・見え隠れする手錠を除いては。みな、溜息をついた。もちろん事情はユウから聞いている。ただ、桜田だけは。彼女にだけは・・・。
みな彼女を見た。彼女は横にわずかに一瞥し、相変わらず無表情のまま。石でも見たような表情だった。
「みんな、すみません・・・」大平は精一杯の言葉を出した。
「(一同)・・・・・・」
「ユウ」
「・・・?」ユウは戦闘のこともそっちのけし、いつも通りの表情で見た。
「どうかしてた、と言ったら変か?」
「さあな。どうなんだ?」
「・・・・」
「彼女に言えよ。何か」
シナジーは、みなを従えて外に出た。自然な成り行きだった。警官はしかし外すわけにはいかない。
個室の外、ユウはシナジーに向かった。
「もう何がどうなったって。事実は分かっても、ピンとこない。また明日から、普通の生活に戻るような気がして」
「・・・・・」
「大平だって、殺したいくらいの気持ちなのにな。それが、なんだ。いざ会ったらこっちはほんの無力で。一体何なんだ。大衆みたいに戦争存在のみを否定して、それで終わりか」
警官2人が大平を伴って、個室を出てきた。桜田は片腕で表情を隠し・・・
どんな会話だったのか、以後も誰も知らない。
それと、ユウも分からなかった。一体だれが自分を助けて、そうつまり自分は誰のおかげで、この世に存続しえたのか・・・。
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