♪ なぁかぁしぃたこぉともあある・・・(以下略)

 バカ井(主役)は、夜中自転車をこぎ続けた。パチンコの帰りだが、やはり今日も負けていた。
「あああ、バイト遅れるよ!バイト!」

 段差をウィリーで飛び乗ったが後輪がぶち当たり、たぶんパンクした。そのまま2階建ての寮に入る。1月1万円。トイレは共同。

 後ろ、スープラが停まっている。緑の光るナンバー。CD10連奏。先輩の2年生のだ。
「プップー!おい。今からディスコ行こうと思うんやけど」
「先輩すみません。今から僕、バイトなんです」
「チッ・・・私立の女子大の子ら来てんのによ!まあ俺は間に合ってんだけどよ!」
「ごめんなさい!」

 スープラは<ゴッドファーザー>を鳴らし、急発進で行ってしまう。

 バカ井は部屋に入り、せっせと支度。参考書の詰め込み。留守電を聞く。

『こちら大阪ガスです。明日までに振り込まなければ、ガスは止まりまピーガチャ!』

 隣の薄い壁の向こうは米米クラブが聞こえ、数人が合唱。夏だが冷房も、扇風機すらない。テレビは14インチだが台が移動しすぎて車が1個なく傾いている。

『あーオレ。先輩だけど。大至急、電話するように。いったいどこ行ってんねやこいつピー!』

 再び自転車に飛び乗る。今も共同トイレは使用中。急な坂を駆け上り、塾へと向かう。時給2千円。大学を通じてやっと見つけたアルバイトだった。

 たち漕ぎにつかれ、横の自動販売機にもたれかかった。

「はーもうだめ!タイム!」
 次々と滴り落ちる汗。授業の始業は近い。

 すると、横にメタリックのRX7がブロロン!と停まる。きっとヤンキーだ。窓が開いており、何か野次を飛ばされそうだ。

「お、お金は持ってませんから!」

しかし、向こうの冷やかしはある意味軽いものだった。

「エロ本買うなよー!あっはははは!」
ブゥー!と走り去り、ストップランプが滲む。

「エロ本って何だよ!エロ本て!」

 ふと、販売機を見ると・・・確かにエロ本が10冊ほど売っている。

「エーーーーーーーッ?リィイーーーーーーーー!」


(つづく)

 








 

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