バカ井は、自営業の家に戻ってきた。兄が彼を客と間違えそうになった。

「へいいらっしゃ・・なんだお前か」
「なんだお前かはないだろうが兄さん!」
「世の中は好景気だってのに、うちだけ不景気だ」
「ジャッキー映画の字幕みたいに喋らなくていいだろ!」

 バカ井、食卓へ。嫉妬深そうな母親。
「お医者になると思ったら、ノコノコ帰ってくるし」
「学生なんだから仕方ないだろう?」
「教養学部って。教養も何もあったもんじゃない」
「そりゃそうだけど」
「兄さんを見なよ。うちのビジネスが成功すりゃね、お医者なんかメじゃないんだよ!そのうち土地転がして・・・」
 赤井はドンとテーブルを叩いた。

「僕はね母さん。金が欲しくて医者になるんじゃないんだ!」
「だけどねあんた。こうして医学校に入るまでどんだけ金つぎこんだと思ってんだい!」
「だから金じゃないって!」

兄も参加。

「母さんの言うことももっともだ。電子工学科に入れば将来花形っていうのに。医者なんておい。人の死ばかり見て」
「生かせることだってあるさ」
「お前が?はっはは」
「笑うなよ!」
「いいか。純粋に人助けしていいのは、真の金持ちだけなんだよ。道楽だ。金持ちに限ってボランティアばっかしてるだろ?」
「ああ。あれは偉いと思うよ」
「ちがうさ。金持ちの奴らは・・・金で満たされない部分があってな。それをそうすることで埋め合わせてるんだ。そうやって世界のバランスが保たれてる」

 バカ井は、むっつりと黙る。

「だからな。身内が第一潤ってないのに、やれ人助けがどうとか正義がどうとか言うな」
「介護のアルバイトをやろうと思って」
「やめとけ。オレが許可しない」
「だって人助けがしたいんだ!」
「医者の人助けは技術でもってしろ。オムツや介助は、その担当にやらせりゃいいんだ」
「もういいよ!」


その頃、適当は開業医の親父に頭を下げていた。
「どうか!許可を!」
「駄目だ。留年がほぼ決まってるというのに」
「だからそれは!追試験には通ってみせる!」
「そんな男が人を助けたいか?やれやれ・・・その前に自分を助けろって言うんだ!」

 適当は床を睨んだ。

「こんな親に、誰が相談するか・・・!」

 シンゴだけが独断で夢を見ていた。

「意外とよお。介護する家のばあさんが金持ちでよぉ。学生さん少ないけどこれ!え?こんなに!いやいや、よければうちの孫。美人のお嬢さんだけどもらってくれないかって。分かりました。おばあちゃんのために、僕この家で一生暮らします!なんちゃってなえへへ。いて!」

 道路。後ろから頭をどつかれる。バカ井と適当。

「(2人)おい。行くぞ」
「へへへ・・・いい夢見てたよ」

 エーーーーーッ!リイイィーーーーーー!








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