⑮ あんたら、何様ですか
2010年4月28日 連載じいさんは長男の家に戻り、林檎らも応接室に招かれた。
怒りのいったんおさまった長男がしばらく沈黙している。誰も口を出そうとしない。瞑想にふける林檎ら。するとシンゴが・・
「あー」
ダイバダッタ、いやアクビだった。
「ま。このまま時間がすぎてもしようがない」と長男。
「・・・・・申し訳ありません」バカ井も皆も、頭を下げ続けた。
「だがな。うちの父親が軽症だったとはいえ、独断で暴走した君らの責任も大きいぞ」
「はい!」
「しかも、お世話になっている施設のドクターの手まで潰しおって」
シンゴは上半身を起こした。
「で、ですが!」
「なんだ?」
「分かってください!こちらも・・・じいさ、いやあの方のことを心配してとった行為なんです。ふつうじゃなかったし」
「なにが?」
「いや何がって・・・あの先生の対応とか。軽いっていうか。それでいいのかお前っていうか」
「そんなことないだろう!君らより遥かに経験の多い先生だ!口を慎まないか口を!」
バカ井も我慢を越えた。
「それにですね。後ろでちょっと落ち込んでます、適当先輩なんですが」
「ふん?」
「実は試験があったんです。ところが今回のことで間に合わなくて」
「私の父親の責任というのか!」
「じゃなくて!どうして丸くする方向にいかないのかなあもう!」
大人って、それそのものが嫌がらせな存在だ・・・!バカ井はそう思った。
帯を締め直し、長男は見下げた。
「それで試験に落ちただと?単にお粗末な、自分の責任じゃないか」
適当は起き上がろうとしたが、皆が押さえ込んだ。
みな、話の核から外れていた。
「はなせ!はなせったら!」振りほどく。
「負け犬はな。負けを認めんから負け続けるんだ!」と長男。
「オレが負け犬ですか」
「・・・・」
「認めたら、勝てるとでもいうんですか」
「・・・・」
「惨めなだけだ。そんな人生」
ダッ!と駆け出す適当。もう夜中の2時。
「・・・君らも、もう帰りたまえ。そして2度と来なくていい」と長男諦め顔。
みな、1人ずつ帰っていく。バカ井は自営業の家に戻った。
長男がやはり起きて待っていた。
「何してたんだ!」
「・・・・・」
「母ちゃんに、わけ説明しろ!わけを!」
「兄さんはいいよな。ここで同じことの繰り返しで」
「なに?自営業だから仕方ないだろが」
「僕らはね。契約や取引きの世界じゃない。人間を治すために、幸せにするために手助けするんだ」
「ああそうですか。お医者さん」テンション低めに。
「その気持ちをね兄さん。踏み潰す人間もいるんだよ」
「何があったなあ。何があったんだ!女か?女なんだな!」
「話しても分からないよ!」
「おい行くな!」
「行くよ!勝手だろ!」
「上には!」
ドンドン・・と2階へ駆け上がっていく。
「うわあああ!」
ふとんにそのままダイビングすると
ガツン。と星が散らばった。
「あいたたた・・・」
母親が頭を抱えて起きてきた。
「か、かあさんじゃないか!」
後ろで呆然とする兄。
「遅かったか・・・」
母親は頭をさすった。
「おうおう!息子に殺される殺される!」
「かあさん・・・」
人の痛みが今ひとつわかってないバカ井であった。
エーーーーーッ!リイイイィーーーーーッ!
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