中産階級っぽいが高級新築の2階建て。勉強部屋をいつもより下から見上げているコナン坊。いや、視界には勉強机でなく、高齢者といってお世辞ないオバサンが睨みを利かしていた。



「僕まで・・・?はぁ」



 バカ井は納得いかぬまま、教え子とともに正座させられていた。オバサンはたんたんと説教する。



「そんなの。社会人になってから読むもんじゃ。ったくこんな本読みくさって・・・」

パラパラ、と過激な描写がのぞく。

「おーいやおーいや!なんでもう男は・・・」



コナン坊、一生の不覚であった。いつもは親が帰る前に塾から戻っていた。塾での放課後に、つい夢中になりすぎた。



「・・・・・?」コナン坊が気付くと、バカ井は居眠りしている。

「兄ちゃんよ。塾で何を教えとんねや」オバサンは八つ当たりする。

「グー・・・」

「寝とんかい?」



顎を持ちかけたところ・・・

「寝てません!失礼な!」とドラ声。

「ぐわっ!」おばさんは飛びのいた。



ドラ声はバカ井の童顔からかけはなれたものだった。

「お母さん。エロ本エロ本と世間は言いまずが」

「はい?」

「実は我々の大学での教材として!あ利用するごどもあるのでず」

「はぁ?ところでおたく、学部どこでんの?」

「失礼な!これでも医学部のフン!はしくれです!ときた!」



もちろん、コナン坊の変声器によるものだ。



オバサンの表情が反転180度した。

「はれまあ!いつもお世話になりますへぇへぇ!」



コナン坊は、そんな母が悲しかった。

「オイオイ・・・なんだよその態度の変わりようは」



「これ!何ニヤニヤしとる!」

「げっ」

「そんな表情で、女の裸見てんのか!」

「(へへ・・・ついでにヨダレ垂らせってか)」



「お母さん!で、続きですが」ドラ声。コナン坊、多忙。

「はいはい」

「わたくし、将来産婦人科を目指しておりまして。ただ今は教養学部という、医学の勉強にこれから携わる身」

「ほうほう」

「息子さんの学力は完璧です。彼が医学部を目指しているのをお聞きして感嘆し、私の勉強教材の一部をお貸しした次第であります」



オバサン、しげしげと本をめくる。



「そー考えたらほんま、よーできた体やわい」

「そうなのです。病気を学ぶためには、どうしても健康な体から学ばんといけません。そのためにはどうしても、若い娘の体が必要なのです」

「なるほど・・・」

「だからといって、本物に手を出すのはそれこそ犯罪」

「塾女やったら、寂しいんが1人ここにおんのに」

「(やめろってんだよ・・・!)」



バカ井はずっと眠っている。



「なら、モデルの質も良く症例も豊富な本が手っ取り早く、また入手がしやすいのです」

「そうか。そう言えばいいものを」

「それを息子さんは、今日お伝えする予定だったのです」

「わしがヒト先前に見つけたもんで、もめてしまったわげか」



オバサン、あんたはどこの方言だ。



バカ井は目覚めだした。

「う、う~ん・・・」

「先生。ねぇ先生」コナン坊が揺り起こす。

「うう・・」

「持ってきた本は、持ってかえってくれなきゃ先生」

「え?」



コナン坊は、バカ井の抱えた袋にエロ本を次々と詰めていった。



「じゃあ先生。もう帰りなよ」

「え?ああ」



オバサンはずっかりバカ井を気に入り、玄関まで見送った。



「先生。これからも息子をよろしくおねげぇします」

「じゃあねー!バタン!」



玄関の電気がフッと消えた。



「・・・・・・そっか。説教。終わったんだな」



くるっと振り返ると街灯のみ。近くの電柱の横に少女が立っている。

「・・・先生」

「君!カイバラ君!塾やめて以来だね!」

「情報あげる。先生が介護してたおじいさんがね」

「あぁ」

「実は・・・」



ヒソヒソ、と視聴者には聞こえず。



バカ井は青ざめ、カバンごとのけぞった。



「エエエーーーーーッ?」



ドサドサドサドサ・・・・・・・(エロ本が次々落ちる音)



コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索